コラム

発語前でも…

今月は保護者の方から頂いた“子どもの心’’をご紹介させて頂きます。

1歳4か月Eちゃん

おねえちゃんが怒られて泣いてしまった時に、近くにいたEは側にかけより、まるで「どうしたの?だいじょうぶ?」と言っているように、なでなでしてあげてギューしてあげていました。 なんて優しい子なんだ…と泣きそうになったのと、1歳でこんな気遣いができるんだ!と感動し ました。

1歳3か月H君

会場から出て行こうとするH···。みていると出口でピタッと止まり、それ以上行かない感じ・・・「いっていいのかな?どーしょーかな?」と考えているような後ろ姿で見ていて感心しました。

どちらのお子様も姿が想像できますね。言葉で発することはまだまだ難しい年齢です。でも、こうして近くにいるご家族が心を読み取り、受け止め、理解してもらえる経験の積み重ねが、発語やコミュニケーション、そして、何より豊かな心の育ちに繋がります。

このようなご家族の温かな見守りが嬉しいです!

副園長 若山 望
(「櫻」つくしんぼ・そよかぜ 2023年2月号より抜粋)

13年後の自分へ

1月8日(日曜日)、翌日に成人式を迎える卒園生(43期生)と保護者の皆様が保育園を訪ねて下さいました。その成り行きはというと、13年前の平成20年度の卒園生保護者の方から子ども達が書いたメッセージや写真を四角い缶に詰め、13年後の成人式を迎える前日に保育園に皆で集まって開封したいという企画の提案から始まりました。

子ども達も担任たちももちろん大賛成、皆で協力して、なにを入れるかを相談をし、一人一人がメッセージや絵をかいて、写真等と合わせて缶に詰めました。卒園式当日、平成35年1月8日、成人式前日に保育園に集まって再会した後に開封することを約束し、タイムメッセージとして封印したのです。13年の間、私の書棚に大切に保管してあったものを8日に皆で開封したのです。

当日は卒園生27名、保護者18名が集まって下さいました。当時の担任3名(内現役2名)も参加させて頂き懐かしい会を催すことができました。当時の担任が一人一人の名前を呼んで袋に入ったメッセージを手渡すと“懐かしい~”と大騒ぎで友達と笑い合いながら開封する子、愛おしそうに開封して微笑みを浮かべカバンにしまう子などそれぞれでしたが、嬉しそうでした。

皆が立派に成長され、それぞれが目標に向かって歩んでいる様子を本人や保護者の方から伺うことができたことは、私たち地域に根ざす保育園として大変喜ばしい出来事でした。これからも見守っていきたいと思っています。

「櫻」園長 若山 剛
(「櫻」つくしんぼ・そよかぜ 2023年2月号より抜粋)

人との触れ合いの中で生まれる力

~相手を知る、我慢強く、社会性~

2学期の終業式に、幼児クラスのお子様には『手作りすごろく』をお渡ししました。年末年始にお楽しみいただけましたでしょうか。

スマートフォンやタブレット端末、ゲーム機などが進化して画面の向こう側に存在するであろう対戦相手やコンピューターとの遊びが多くなっている昨今ですが、昔ながらの『すごろく』の遊びには、下記のような育つ力がたくさん含まれていると思います。

  • 一緒に遊ぶ相手とのやりとり(コミュニケーション能力、相手との競い合い)
  • サイコロやコマを扱う動作(力加減や指先への意識)
  • 文字や数字に触れる(拾い読みの機会や数と量との一致)
  • 相手の順番を待つ(社会性、ルールの理解)
  • 最後の結果が出るまで終わらない(勝敗の理解、我慢強さ)

などの要素が詰まっています。トランプやカルタなども同様です。

すごろくは、ゲーム機のように「思い通りにならないから『リセット』ボタンを押してやり直す」、AI相手のゲームにありがちな素早く進み、すぐに自分の順番にする事など、自分の都合が優先されることはありません。社会性が育つ4歳児以降には存分に経験させてあげたい遊びの一つと考えています。

「白樺」園長 品川 晃彦
(「白樺」もえぎ 2023年1月号より抜粋)

あけましておめでとうございます

“日本の社会が人々に温かく、一人ひとりが安心して心穏やかに過ごせる暮らしを願う”
今年も祈願してきました。

“子ども達がのびのびと安心して過ごし健やかに成長できる場所でなければならない保育園、そしてそこにいる大人(保育士のみならず)は、“子ども達が安心して自己発揮し、明るく楽しく過せるように環境を整えながら、全ての子ども達を可愛がり愛情あふれる関わりを重ねられる人でなければならない’’、改めて子ども達の育ちを保障する大人の責任についても、深く心に刻む年明けでした。

「あけましておめでとうございます!ことしもよろしくおねがいいたします!」
背筋を伸ばし、相手の目を見てはっきりとした口調で堂々とご挨拶、お辞儀もきちんと行う5歳児。お正月、ご家族にたくさん褒めてもらえたことがうかがえます。年末年始休み明け、久しぶりの登園日に「泣いてしまうので は?」と、乳児部の保育士達は子ども達一人ひとりが好んで楽しんでいた遊びを用意して待っていました。一目散に遊び始めるT君、家族との離れ際は涙したものの、自ら気持ちを切り替え遊び始めるMちゃん。保育園の生活は、子ども達の意欲とそこに関わる大人達との信頼・共感、そしてご家族の方との信頼・協力が基本となっています。年の始めに見せてくれたこの子ども達のように、“子どもの輝かしい心の瞳”が中心である生活となるよう、保育園が温かな場所でなければいけないという基本を大切に重ねていきたいと思っています。”子どもの心”を保護者の皆様・担任達とたくさん語り合い、一人ひとりのお子様の成長を楽しみに、今年もまた保育に励んでいきたいと思います。

よろしくお願い申し上げます。

副園長 若山 望
(「櫻」つくしんぼ・そよかぜ 2023年1月号より抜粋)


「大丈夫だよ、オムツしてるから」

「これから車に乗るから○○ちゃんもトイレに行っておこうよ」と2歳か3歳の子に話しかけるお母さん。子は考えている様子。

間髪入れずに「大丈夫だよ、オムツしてるから」とお父さん。結局、子の反応や意思表示はないまま、手をつながれて行ってしまいました。

 職業柄その後、どうなったのか気になってしまいました。

 これは立川のショッピングセンタートイレ前で私が見かけた光景です。皆様のご家庭だったらどのようにされたでしょうか。

“大丈夫だよ、オムツしてるから…” 気になるのはこの言葉です。
車の中で漏らして欲しくないお父さん、お母さんにとっては確かオムツをさせていれば大丈夫です。

子どもも座席を汚さずに済むわけですから大丈夫ということになるかも知れません。
ただ、子にとってはオムツにオシッコが出れば不快感を抱き本当は大丈夫とは言えないはずですが、“3回してもサラサラ”というコマーシャルが影響しているのでしょうか。

お母さんが“トイレにいっておこうよ”と問いかけた時に、子は自分の排尿感覚、でるか出ないかを自分で感じようとしていたかも知れません。でも、意思表示を待ってもらえず手を引かれて車に乗せられてしまったのかも知れません。

子が自身でオシッコがお腹(膀胱)にあるかを自覚するタイミングを逃さず、トイレ(オマル)に誘う、排尿ができたときに大いに誉める。この日々の繰り返しの中に排泄自立への近道があると思うのです。

たまたま出会った会話の一部ですから、お父さんの“大丈夫だよ”を批判しているわけではありません。衛生面を考えて外出先でトイレに行かせたくないという考えもあるでしょうし、もしもの時を考えてオムツをさせておきたいと思うのも当然です。

ただ、子が「オシッコ…」と訴えたり、トイレに誘える時にはトイレでできた方が子にとっては自立に向けて良い経験となるということ、子がオムツに尿がある不快感に慣れてしまうことが自立を遅らせることなど、オムツに頼りすぎない事の大切さを理解して頂きたいと思い、たまたま見かけた実例から書かせて頂きました。

過去に相談を受けた事例の中には、保育園ではトイレで排尿しているのに、お家ではわざわざオムツにはきかえて排尿、排便をする子の例もありました。

トイレで済ませることを教えることの方が自然だと思いませんか。

「櫻」園長 若山 剛
(「櫻」つくしんぼ・そよかぜ 2022年12月号より抜粋)

子どもの力を信じる

比較的暖かな日が多かった11月、園庭で興味のある遊びでのびのびと楽しむお子様達の姿を多く目にすることが出来ました。

2歳児Aちゃん&1歳児Mちゃん

巧技台20cmと10cmの間にビームを2本渡し、傾斜のある橋が設定されてありました。
高い方から降りてくるAちゃん、下から上がってくるMちゃんを発見、二人とも両方のビームにまたいだ状態で立っていました。“どうするのかな~?’’と眺めていると、片方のビームに足をそろえ横向きで降り始めるAちゃん、その姿をみたMちゃんは空いた方のビームに同じく足をそろえて横向きに登っていきました。その間二人に会話はなく、落ちないように二人とも真剣でした。

三輪車遊び(5歳児2名・4歳児1名・2歳児3名)

朝の園庭遊びの設定に三輪車のコースが描かれていました。大きな三輪車を巧みに乗りこなす5歳児、そのカッコよさに憧れるようにして必死についていく4歳児、その姿をじっと見つめる2歳児、そんな中でも黙々と自分の三輪車を必死にこぎ続ける2歳児、5歳児の運転にはスピードがあったので私もしばらく目を離さず見守りました。ゆっくりとこぐ2歳児の後ろにつきどうするのかと見守ると、きちんと一度は止まりペダルから足を降ろし足で歩いて横から抜いていきます。次にはその子にぶつからないようカーブして抜くことを考えたようです。そのうち2歳児の担任が危険を感じたのか「ガソリンスタンドです」と砂場道具を用いて給油所を始めると2歳児数名が給油係りに、5歳児が「ガソリンお願いします!」と参加します。4歳児も嬉しそうに真似ます。みんなが笑顔でなんとも微笑ましい光景でした。

大人からみてヒヤッとすることでも工夫する力を持つお子様達、ちょっとした工夫で遊びに変えていくお子様達、“子どもの力を信じる”高橋理事長がよく話されている言葉を実感しますね。

副園長 若山 望
(「櫻」つくしんぼ・そよかぜ 2022年12月号より抜粋)

「子どもに手伝いをさせよう」

「ティッシュペーパー1枚ください」と言って園庭から事務所に入ってきたさくら組の女の子、鼻水が出ているのかと「はいわかりました、どうぞ」といってティッシュボックスからティッシュペーパーを一枚とって手渡しました。でも釈然としない表情をしています。「どうした?ちがうの?」と聞くと「うん、ちがう!」「こういうのって先生が…」と手で四角い形を作って訴えてきました。「あっ、ポケットティッシュかな」と言うと「うん、そうそう」と言うので、「わかりました、ポケットティッシュ一個だね、お手伝いありがとう」といって手渡しました。

保育園ではこのような場面は日常茶飯事です。少しのお手伝いも生活経験の一つだからです。頼まれた内容を理解して、覚えて、行動、相手に伝える、そして頼まれたことを実行する。お子様たちにとってはドキドキすることもあるでしょう。でもお手伝いを終えた後は、「ありがとう」と喜ばれ、相手に伝えられた事、行動した事は、お子様たちにとっては心が満たされ、自信が付く大切な経験の機会でもあるのです。

幼児のお子様はすすんでお手伝いしてくれるご家庭もあると思います。「自分の事もできないのにお手伝いなんて…」「逆に散らかる…」といった声も聞いたことがありますが、家族の一員としてできることをお手伝いをさせることで、喜ばれたり誉められるという経験を積み重ねると、自分から手伝いをするきっかけとなり、様々な場面で育ちの好循環をつくっていくことにもつながると思うのです。

園長 若山 剛
(「櫻」つくしんぼ・そよかぜ 2022年11月号より抜粋)

分かってはいるけど…

10月は気温の変動も大きく、 体調管理や衣服調節に戸惑う日が多くありましたね。当圏の子ども達は幼児部になると朝から運動着に着替え半そで半ズボン、少し冷える日は上に一枚長袖を着て 過ごしますが、 遊び始めるとすぐに脱いで元気いっばいに遊び回っています。先日の保育公開ではそんな退しい姿を感じられた方も多かったのではないでしょうか?

さて、 その保育公開、 お家の方に来てもらいとても嬉しそうな表情、 自慢気に活動する姿をたくさん見かけ ました。 そんな中、 これからお仕事に向かう…、 まもなく終了時間…、 お子様達の淋しい気持ちとの葛藤に何人か出会いました。

1歳児 H君

たまたま園庭で出会ってしまい、なかなか離れることが出来なかったH君。こちらの配慮ミスもありH君 に申し訳ない気持ちを伝えつつ「10数えたらママ抱っこおしまいでいい?」もちろん頷いてはくれません。
「そうだよねーごめんね」と受け止めつつも、せっかくの保育公開いつもの姿を少しでも見て頂きたかったので、数え始めました。もちろん納得はせず泣き泣きの別れになってしまいましたが、最後は私に手を伸ばしてくれて諦めてくれました。しばらくは担任に抱っこされていましたが、いつもはよく遊んでいるH君なのでそのうち本領発揮、ニコニコ笑顔で遊んでいました。

2歳児 Y君

H君との関わりがあった後、今度はこれからお仕事に行くママと離れることを悲しむY君を見かけました。 ママの足にしがみつきニタニタとしています。きっと承知はしていたのでしょう、同じように心の準備として10数え始めました。数え終えると自らママの足に絡めた手を放すY君、離れた後多少は声を出していま したが、しっかりと自分で気持ちを切り替えて担任と一緒に保育室に戻りました。

お子様達は、 分かってはいるけど気持ちの整理がつかずに泣いたり怒ったり…、よくありますよね。

大人も泣かれてしまうと戸惑います。 そんな時には、大人も素直に気持ちを伝えたり、切り替えのきっかけを作ってみてあげるのもよいでしょう。

副園長 若山 望
(「櫻」つくしんぼ・そよかぜ 2022年11月号より抜粋)

味覚が育つ大切な時期だから

先日、調理室から“今年はサンマを献立に入れられますか?”と相談がありました。“魚屋さんからは、今年は型が小さく一尾700円程すると言われています”とのこと。“秋の味覚だから味合わせてあげたいけどね・・・”と話しました。

随分前の事です。夕方のお迎えの際、階段下に置いてある、お子様たちが昼食と午後食で食べたものを展示するケースの前で、子ども(2歳)とお父様が一緒に、「きょうはなに食べたんだ?」と立ち寄っていました。「おっ、サンマか旨そうだな!」と。

ちょうど近くを通りかかった私は「お帰りなさい、今日はサンマを食べたんだよね、美味しかったね」と声を掛けました。「良いもの食べてますね~」とお父さん。

「時期ですからね、あぶらものって美味しかったですよ」「骨は自分でとるんですか?」「幼児は自分でよけて食べますが、○○ちゃんのクラスは大人がとってあげてるかな」「へえーそうなんだ」「それでこの緑の切ってあるやつは?」と聞くので、「これはカボスですよ」と伝えると、「えっ!こんなに小さいうちからサンマにカボスをチュッと絞って食べてるんですか?」と驚いて聞かれるので、「そうですよ、美味しかったよね○○ちゃん」と応えると、「うん、おいしかった」と嬉しそうな○○ちゃん。

「へえ-っ贅沢だね…」とお父さん。幼いから…、わからないだろう…ではなく、味覚が育っている大切なこの時期だからこそ、本物の味を味わう経験が大事ということを付け加えて話すと、「そうなんだ、なるほどね、ありがとうございます」と感心しておられたことを思い出します。

昨年に引き続き今年もサンマの不漁、価格の高騰もあり見通しが持てない状況ですが、手配ができればなんとか味合わせてあげたいと、担任も調理室も思っているようです。現段階では、知人の紹介で地元の漁師さんにお願い出来るかも知れないとの情報は入っているのですが、漁獲量が少ないことから手に入るかどうかわからないとの事でした。なんとか“秋の味覚を食べさせてあげたい”と模索しているところです。

「櫻」園長 若山 剛
(「櫻」つくしんぼ・そよかぜ 2022年10月号より抜粋)

自己主張との付き合い方

1~2歳児クラスのお子様の連絡帳や子育て相談で一番多い内容です。

<2歳児Nちゃん>
「ひろちゃん!ひろちゃん!」と叫び続けるNちゃん。(ひろちゃんとは、「櫻」で飼っているうさぎさんです) あまりにも大きな声で叫ぶので「ひろちゃん見たいの?じゃあ一緒に行く?先生に “ひろちゃんの所に行ってきます’’ ってお話しよう」と近寄りました。でも言葉にはしません。表惰はしっかりと私の目を見ています。代わりに私が代弁をし、ひろちゃんの所にいきました。

しかし、またそこから行先は違います。園長先生のいる所を指差し室内へ、しかし園長先生はいませんでした。それでも出て行こうとはしません。「園長先生がいいの?じゃあ待ってようか。」というと事務所内をウロウロ…。そこへ園長先生が入ってきました。「園長先生と遊んでからお部屋に帰る?」表情は冴えません。そこで園長先生が 「ひろちゃんにご飯あげに来たのかな?」との声に「それ!」と言わんばかりの表惰をみせるNちゃん。「〇〇先生と一緒にあげておいで、そうしたらお部屋に帰るんだぞ!」と袋に入った餌を園長先生からもらい大満足。ひろちゃんに 餌をあげて素直に保育室に戻りました。

「ひろちゃん!」と叫ぶことしかできなかったNちゃん。本当は先生と一緒に餌をあげてから保育室に行きたかったけれども、園長先生の所から餌をもらわないと出来ないことが分かっていて、その説明は難しかったのでしょう。

このようにこの時期のお子様達の自己主張の内面は、上手に言葉で伝えることが難しく、叫んだり怒ったり泣いたり して訴えているのだろうと感じることが多々あります。過去にあった出来事から、自分なりに見通しをもち生活するようになってきた成長の姿です。主張の中に潜む思いを察し、気持ちに寄り添えることが大切です。

日頃、担任達もお子様達の内面にたくさん向き合っています。関わりが難しいと感じる時には、ぜひ担任達と沢山 相談してみてくださいね。

副園長 若山 望
(「櫻」つくしんぼ・そよかぜ 2022年10月号より抜粋)