「どうしたの?」泣いている事に気付いた友達がA君に声を掛けてくれています。
「・・・」「いやなことがあったの?」「・・・」、反応がありません。(4歳男児)
近くにいる先生が、様子を察して「○○だったの?」と聞いてあげると、「うん」とうなづきますが、すっきりとしない表情です。
また、折り紙遊びをしているときに、グループ毎に容器に入った糊がテーブルに用意されているのですが、友達が使った後に遠くの方に容器が移ってしまい、自分も使いたいのに言い出せないでいる。「ぼくも使いたいから貸してって言うんだよ」「みんなで使うから真ん中に置いてよと言っていいんだよ」と大人に助けてもらって、「ぼくも使いたい」と小声で言う。
自分の思いや意志、気持ちを、言葉で表現することが苦手なお子様の姿が気になります。発達の違いや個人差はあるのは当然ですが、大人から声を掛けてもらう、やってもらうことを待っている、受け身の姿勢が目立つように思えるのです。
「○○したい」「いやだ」「ねえ、○○できないからやって」「ぼくが使っていたんだよ、順番だよ」と自分の意思表示が相手に伝わるようにできる事は、安心して生活をするために大切な事です。思いを伝えられないと不安が重なり、心の中が晴れない状態がつづくために自発的に行動することもできません。
特に幼児は周囲の状況を判断して、自分で行動に移せる子にして就学を迎えられるようにしたいと考えています。大人の都合で指示や命令をするのではなく、「周りを見て考えてみよう」「どうしたらいいかな」と周囲の状況を自分で感じて、考えて行動できるように声かけをすることを大切にしています。
自分の気持ちをどのように表したら良いのかもわからない年齢の子ども達ですから、その都度、状況に合わせた応対の積み重ねが必要です。指示や命令で従わせるのではなく、自分で考えて判断する、また行動する機会をなるべく多く作って行き、考えられたときや言えたとき、行動に移せた時には褒めてあげる、その積み重ねが大切なようです。
「櫻」園長 若山 剛
(「櫻」おひさま 2025年7月号より抜粋)