「間違えちゃったんだよ…」

最近、“いけないことをしてしまった”と自分でわかっているのに「間違えちゃったんだよ…」と伝えてくるお子様の姿が気になっています。

つまり“いけないこと”とわかってしたことを、「間違えちゃったんだよ」と子が言ってきた時に「そうか仕方ないね、今度は間違えないようにしようね」と終わりしてしまって良いのかということです。

自分がいけないことをしたことをわかっていて、怒られるかも知れない…、何か言われるかも知れない…、と感じている時に、「間違えちゃったんだよ」とその場を取り繕う言葉を認めてしまうと、自分の非を認めない心の芽が育ってしまうのではないかと気になっているのです。

「怒られないで済んだ」「うまくごまかせた」と自分の非を認めずに経験を重ねて行くことは、本来軌道修正しなければならない事柄を放置していることと同じで大変心配です。

ごまかすのではなく、いけないことをしてしまった事実を素直に認めたうえで、同じ間違え、失敗を繰り返さないようにする。それを幼児期、学童期に日々の経験から覚えていく、教えていくことが大切なのではないでしょうか。

4.5歳児の発達期の特徴として、物事の予測が付く、想像ができるようになる前頭葉の発達とともに、想像することができるようになり、見通しを持って生活したり、遊びを展開することができるようになります。遊びのルールを守って楽しむこともできるようになるのもこの時期です。一方で自分の行為や言動、保育園での出来事を自分の都合で、また自分本位で大人に話すこともできるようになります。「○○くんが叩いてきた」と訴えてくることがありますが、叩かれたことの原因が自分にあることは、よく聞いてみないと話しません。

友達が使っていた玩具を強引に奪い取ったことが原因で叩かれたとしても、「○○君が叩いてきた」と主張するのが子どもです。その場面だけを認識していることも多いのですが、中には自分に原因があることを話すことは不利だと智恵が付いてくることもあります。

「どうして○○君は叩いてきたのかな?」と場面を思い出させるように聞くと、「ボクが玩具をとったから」と話し始めることも多いようです。保育園では「そうか、仲良く遊ぶために「一緒につかおう」「貸して」っていってみれば良かったかもね。」と相手の気持ちや思いを考えさせ、どうすれば良かったかを一緒に考えるようにしています。

叩いてしまった子には「どうして叩いちゃったの?」と聞いた時、もし「間違えちゃったんだよ」を答えが返ってきたら、「間違えないようにしようね」で終わらせるのではなく、「なにを、間違えてしまったのか教えて…」「同じ間違えをしないように一緒に考えよう」と一つ一つの事柄に丁寧に向き合うようにしています。「使っていた玩具をとられて嫌だっただね、イヤだよ、とらないでってお話ししようね」「叩くのは痛いからやめようね」と伝え、その都度、経験からどうすれば良かったかを伝え覚えていくことを積み重ねていけるとよいでしょう。

「櫻」園長 若山 剛
(「櫻」おひさま 2023年7月号より抜粋)