コラム

”優しい心”を生まれ持っている

1歳児T君

0 • 1歳児の子ども達が園庭でのびのびと思いのままに楽しんでいた時のことです。少し離れたところで遊んでいた0歳児のHちゃんが、危ない所に向かいそうになり0歳児の担任と私が咄嵯にHちゃんに駆け寄りました。0歳児の担任の側で遊んでいたO君、急に担任が離れ不安そうに「フンフンフン ・ ・ ・」そこへ1歳児のT君、自分が手に持っていたバケツとシャベルをO君に差し出し、シャベルを回して見せたり中の葉っばをすくってみせたり・ ・ ・、O君もじっとT 君の手先を見つめていました。ときどきO君の表情をのぞき込んではやってみせる、まるであやしてくれているような姿に感動しました。

まだ年齢的にも小さな乳児部の子ども達でもこのように相手の姿から何かを感じとり、思いやりを示す光景をよく目にします。0歳児の保育室でも泣いている子に近寄り頭を撫でたり、玩具を渡そうとしたり、子ども達は本当に“優しい心’’を生まれ持っているのかもしれませんね。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2023年10月号より抜粋)

2学期の始めに

「早寝、早起き、朝ご飯」生活のリズムを整えましょう。
子どもの姿、どこが違いますか?

◎望ましい生活リズムができている子どもの姿

  • 心が安定している(穏やかでトラブルも少ない)
  • 何事にも意欲的で食事もよく食べる
  • 自ら気持ちの切り替えが出来る
  • 落ち着いて人の話をよく聞ける

◎就寝時間の遅い子どもの姿

  • 心が不安定になりやすい(すぐに泣いたり怒ったりしやすい) 
  • 何事にも意欲が薄く依存的
  • 気持ちの切り替えに時間がかかりやすい
  • 食事中や話を聞く時など意識が散漫になりやすい(ボーとするなど)

◎いつも9時までに登園する子どもの姿

  • その気で登園しているため母親(家族)から離れるのもスムーズ
  • 着替えや支度も手際よく行い、主体的に活動や遊びに入れる

◎遅刻、不規則な時間に登園することが多い子どもの姿

  • 支度を自分でする意欲が少ない、また緩慢になりがち
  • 活動や遊びになかなか入れずに、受け身の姿勢になりやすい

生活のリズムを整えることが重要な事は言うまでもありませんが、毎年、2学期の始めに改めて意識して頂きたいと思い書かせていただいています。

家庭の事情は様々ですが、お子様が成長期である事は変わりません。ダイナミックな成長を見せる2学期だからこそ、生活リズムを整えて、皆様と一緒にしっかりと成長を見届けていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

「櫻」園長 若山 剛
(「櫻」おひさま 2023年9月号より抜粋)

子どもの発想力を育むもの

お休み明けのお子様達から「プールいったよ!」「おじいちゃんおばあちゃんの所にいったの!」「水族館でねマンボウみたよ!こ~んな大きいの!」「私は〇〇ランドに5人でいったよ!」など、一人のお子様がお話を始めると次々と目をキラキラさせて報告が始まります。やはりご家族と過ごす時間はお子様達にとってかけがえのない楽しい時間であると共に、豊かな経験が出来る貴重な時間にもなることを改めて感じています。

2歳児4~5人

「なすとピーマンがとれました!」この夏何回目でしょうか?収穫したその日に塩もみにしたり、炒めたりと様々な方法で口にしてきたうさぎ組さん。「今度はどうやって食べようか?どうやって食べる?」と声にすると、「こうやって!」と手を口元にもっていき食べる動作を教えてくれるY君、「確かにそうだよね!」と微笑ましくお話していくと、次は「こうやって!」と包丁で切る動作を教えてくれたN君、「そうね切ってね!切ったらどうする?」「・・・・・」その他2~3人の子ども達が思い思いに頭の中では描いていそうですが言葉にはなりません。2歳児らしいやりとりと一生懸命に考える姿に成長を感じました。

5歳児Hちゃん

3歳児R君の治療の付き添いを頼まれ事務所に来ました。治療を終えて椅子から降りようとするR君に「手はここだよ!」「ここもってごらん」と自分で降りられるように教えてあげています。しっかりと足が床に着くまで見届け「でった~!」と喜ぶR君に「できたね」と共感、その後保育室に走って戻るR君の後ろからスピードを合わせて見守りながら戻ってくれました。まるで保育者のようです!

子ども達は日々の経験、人との関わりの中から自らの発想に繋がっていきます。豊かな経験、思いやりのある日常的なかかわりの大切さを改めて実感したお子様達の姿でした。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2023年9月号より抜粋)

「間違えちゃったんだよ…」

最近、“いけないことをしてしまった”と自分でわかっているのに「間違えちゃったんだよ…」と伝えてくるお子様の姿が気になっています。

つまり“いけないこと”とわかってしたことを、「間違えちゃったんだよ」と子が言ってきた時に「そうか仕方ないね、今度は間違えないようにしようね」と終わりしてしまって良いのかということです。

自分がいけないことをしたことをわかっていて、怒られるかも知れない…、何か言われるかも知れない…、と感じている時に、「間違えちゃったんだよ」とその場を取り繕う言葉を認めてしまうと、自分の非を認めない心の芽が育ってしまうのではないかと気になっているのです。

「怒られないで済んだ」「うまくごまかせた」と自分の非を認めずに経験を重ねて行くことは、本来軌道修正しなければならない事柄を放置していることと同じで大変心配です。

ごまかすのではなく、いけないことをしてしまった事実を素直に認めたうえで、同じ間違え、失敗を繰り返さないようにする。それを幼児期、学童期に日々の経験から覚えていく、教えていくことが大切なのではないでしょうか。

4.5歳児の発達期の特徴として、物事の予測が付く、想像ができるようになる前頭葉の発達とともに、想像することができるようになり、見通しを持って生活したり、遊びを展開することができるようになります。遊びのルールを守って楽しむこともできるようになるのもこの時期です。一方で自分の行為や言動、保育園での出来事を自分の都合で、また自分本位で大人に話すこともできるようになります。「○○くんが叩いてきた」と訴えてくることがありますが、叩かれたことの原因が自分にあることは、よく聞いてみないと話しません。

友達が使っていた玩具を強引に奪い取ったことが原因で叩かれたとしても、「○○君が叩いてきた」と主張するのが子どもです。その場面だけを認識していることも多いのですが、中には自分に原因があることを話すことは不利だと智恵が付いてくることもあります。

「どうして○○君は叩いてきたのかな?」と場面を思い出させるように聞くと、「ボクが玩具をとったから」と話し始めることも多いようです。保育園では「そうか、仲良く遊ぶために「一緒につかおう」「貸して」っていってみれば良かったかもね。」と相手の気持ちや思いを考えさせ、どうすれば良かったかを一緒に考えるようにしています。

叩いてしまった子には「どうして叩いちゃったの?」と聞いた時、もし「間違えちゃったんだよ」を答えが返ってきたら、「間違えないようにしようね」で終わらせるのではなく、「なにを、間違えてしまったのか教えて…」「同じ間違えをしないように一緒に考えよう」と一つ一つの事柄に丁寧に向き合うようにしています。「使っていた玩具をとられて嫌だっただね、イヤだよ、とらないでってお話ししようね」「叩くのは痛いからやめようね」と伝え、その都度、経験からどうすれば良かったかを伝え覚えていくことを積み重ねていけるとよいでしょう。

「櫻」園長 若山 剛
(「櫻」おひさま 2023年7月号より抜粋)

「叱られるのかと思ったのかな?」

4歳児 Y君

「タンスにぶつけちゃったの ・ ・ ・」ひっかき傷のような跡と血も少しにじんでいたので、保育室内の確認をしようと「そっか、どこでぶつけたのか教えてくれる?危ないものね」と手を繋いで2階に行こうとしました。急に立ち止まり「かいちゃったんだ~」と照れながら教えてくれました。「な~んだ、そっか安心したよ。お部屋の棚が危ないのかと思って心配したよ」「かいちゃって血が出たから叱られるのかと思ったのかな?」「うん 」「痒い時 とぶつけた時 とはお薬も違うから、本当のことをお話してくれてよかった!」と伝えると治療後にニコニコ笑顔で保育室に戻っていきました。

Y君は小さな時から虫刺され後が腫れやすかったり、ひどくなると伝染性膿痴疹(とびひ)の心配もしていたので、今までの経験から〝きっとʻʻ掻いてしまうと叱られる〞と思ってしまったのかもしれません。その気持ちを受け止めつつ、正しく伝えることの大切さを感じて欲しいと思い関わりました。

4·5歳児にもなるとこのような会話は日常茶飯事です。大人からみると〝ʻʻ嘘をついている〞と感じてしまいがちですが、子どもには子どもなりに善悪の判断も考えるようになり、今までの経験から自己を守るかのように話しているのかもしれません。言葉の使い方も未熟な年齢なので、会話をしながら真意を読み取り、今後のコミュニケーションに繋がる関わりを大切に重ねていきたいと思います。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2023年7月号より抜粋)

子どもの心に共感しつつ伝える

お子様達はどのクラスもようやく今年度の生活環境に慣れ、のびのびと遊んだり探索や発見に目をキラキラとさせて楽しむ姿が多くなりました。先日の懇談会では、ご家庭での育児を伺う機会にふれ、改めて保育園とご家庭が日常の些細なことでも共有し合う事の大切さを感じました。

2歳児M君連絡帳の内容より

家族でよく川に行き、川の中に石を投げて遊んでいるとのこと。ある日買い物に出かけた時のエピソードを知らせてくれました。同じような石を見つけ投げてしまったM君。当然、お父さんに叱られてしまい、泣きながらお母さんの所に駆け寄ったそうです。お母さんに川でいつも投げて遊んでいることに共感してもらいつつも、お店の中は危ないから投げてはいけないことを諭されお父さんに謝りにいったそうです。
子どもの心にはしっかりと共感し、公共の場でのマナーを育てられている姿に感動しました。

5歳児Mちゃん

つい最近まで治療の度に大泣き、患部を手で覆い見せてくれず、大したことが無さそうな時には流水でサッと洗うだけにしたり、なんとかミツロウだけ塗らせてくれて終えることが多かったMちゃん。5歳児になり「私は痛いのが苦手なの!」「だからやらない!」目に涙をためながらもしっかりと言葉で伝えます。
トゲが刺さっていたので「そっか、痛いのは嫌だよね。みんな苦手だと思うよ。」と共感しながら一緒に考えていけるように話してみました。刺さったままの痛さや一瞬の我慢、しばらく絆創膏で覆い皮を柔らかくしてから抜くと痛みが和らぐことなどなど。Mちゃんの答えは絆創膏でした。翌日には「お家でとれたよ」と笑顔で報告に来てくれました。

人はみなそれぞれ感性があり、その感性は他人が全く同じに感じることは不可能です。たとえ小さな子ども達でも、その子なりの感じ方や経験値から予測する感性はそれぞれです。いつでもどんなふうに感じているのかな?と考えてみることは心を知る上でとても大切なことですね。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2023年6月号より抜粋)

”子どもの心”について

保育園で生活をするお子様達は、自分の思いを上手に言葉を使い伝えることがまだまだ難しい年齢です。0歳児の赤ちゃんだけでなく、言葉を使うようになった幼児部のお子様でも、言葉を選んで自分の気持ちを伝えたり、状況を相手に説明するなど、言葉を使ってコミュニケーションを取りながら生活することは難しいものです。子どもの気持ちがよく分 からずに大人が戸惑い悩んでしまったり、また、子ども同士がうまく思いを伝えられずに、お友達と喧嘩になってしまうのも当然ですよね。

子どもの思いを理解し受け止め共感したり、時には気持ちに寄り添いながら言い聞かせる等、子どもの心を感じながら子どもの身になって考えていく生活は、子育てのコツとも言えます。そして、たくさん共感してもらえた心の基盤が、今後の心の成長の糧となっていくようです。

1歳児 S君

新入園児のお子様が朝泣きながら担任の所へ手を伸ばしていました。担任は「えらいね!ママバイバイだね!また来るもんね!遊ぼー !」 と励 ま している姿 を じーっと見ていたS君、「あい!」と自分が手に持っていた車の玩具を手渡そうと差し出します。「S君ありがとう!」「どうぞだって良かったね!」と担任、それでも泣き止まないので今度は可愛い小さな手で〝いい子 いい子 ″ をす るように頭を撫で始めました。こんなに小さくてもしっかり共感!とても微笑ましい姿にみんなで癒された一コマでした。

お子様達の仕草や目線・表情・会話・行動などから感じる”子どもの心”をお伝えしたり、ご家庭で感じられた姿もお知らせ頂きながら、皆様と一 緒に”子どもの心”の理解を深めていきたいと思います。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2023年5月号より抜粋)

爽やかな5月、遊びの幅を広げていきます

令和5年度が始まり、早いもので一ヶ月が過ぎました。新しく入園されたお子様達も、園生活に慣れて安心して過ごせるようになってきているようです。

連休明けに登園する時には、多少気持ちが乱れるお子様の姿も予測されますが、今のお子様達の姿を見ているとすぐに慣れますので、あまり心配せずお休みをしないで登園して欲しいと思います。

5月は、4月に引き続き心の安定感を大切に、年齢発達に合わせて、お子様の興味関心を刺激するような環境を整えながら様々な遊びを取り入れていきます。

自分の好きな遊びを見つけて楽しく遊ぶ、没頭して遊びに取り組む姿は、心の安定感があってこそ見られる主体的な姿です。担任たちが用意する楽しい遊びや保育環境も心の安定がなければお子様たちは受け入れようとしません。

心の安定のためには、早寝、早起き、しっかり朝食をとるなどご家庭での生活習慣を整えることも、大きく影響します。連休中にお出かけをして疲れが残ることもありますが、通常の生活リズムで安心して過ごすことが“心の安定”の基盤作りとなりますので、協力をよろしくお願い致します。

5月はお子様達が大好きな園外へのお散歩にもたくさん出かけます。爽やかな風を受けながら、五感を通して受ける刺激は、成長発達に大きな影響を与えます。

近隣の畑に植えられている野菜の苗や季節の花を発見するお子様達、特に幼児の場合には「あれは○○のお野菜の苗だよ」「○○の花だね」「木によって葉の色や形が違うね」など具体的に声を掛けると知識欲も増していきます。保育園でも5月中旬頃に夏野菜の苗植えを計画しています。

また幼児は、戸外遊びの機会を存分に取り入れながら、さらに遊びの幅を広げていきます。行事予定にもありますが、クラスごとに遠足に出かけます。

年齢によってねらいは異なりますが、楽しい経験を通して様々な刺激を受けること、自分のことは自分ですること(持ち物の管理)や、公共の場での約束事を知って覚えること、また遠足で体験したことをご両親に話したり、絵に表現するといったことをねらいに進めていきます。

「櫻」園長 若山 剛
(「櫻」おひさま 2023年5月号より抜粋)

「○○と」、「○○も」

子どもと先生、それから子ども同士が心をつなぐ、心を放つ、そのつながりになるキーワード、一番大切な言葉として、例えばダイチャンと、タッチャンに登場してもらうと、先生も一緒にダイチャンと遊ぶからね、ダイチャンと一緒ね、ダイチャンも一緒ねというように「○○も、先生も、ダイチャンも」それから「ダイチャンと、先生と、タッチャンと」というように「~も」の「も」という言葉と「~と」の「と」という言葉、それを保育の中でたくさん使ってください。(中略)会話の中で「も」と「と」をたくさん使うと心の共有を図る働きがある。一方で、「~は」と「は」を使うときには異なる、と著書の中で記している言語学者、幼児教育の専門家がおられます。

保育に限らず、家庭の中で、親子の会話、夫婦の会話、兄弟の会話の中でも「と」と「も」を使っていることが多いように感じます。

つまり「と」「も」とも(共)に、大切な思いを共有できていると自然と会話の中で使うことが多くなる2文字なのかも知れませんね。皆様はどのように思われますか。

「櫻」園長 若山 剛
(「櫻」つくしんぼ・そよかぜ 2023年3月号より抜粋)

次年度の学年の姿を感じる成長

今年度も残り1か月となりました。最近のお子様達からは、次年度の学年の姿を感じる成長を多く見かけます。

<4歳児 Mちゃん>

事務所にお友達と2人で紙をもらいに来ました。 「A4のかみを10まいください!」私が 「じゃあ数えててね」と言って1枚ずつ順番に手渡していきました。お友達は私の手から離れる時に数えています。
「1・2・3・4 ・・・」するとMちゃん「ちがう 1・2、1・2 でしょ!」と自分の手に渡された時にカウントします。もうすぐ5歳児になる2人がどのように折り合いをつけるのか、私はあえてそのまま何も触れずに渡し続けました。Mちゃんの言葉を気にせず、私の手から数えるお友達の唱え方に合わせ始めたMちゃん、「・・・9・10! これでおわりだよ。5まいずつだ!」「おしまい?大丈夫?」と尋ねる私に、「うん!」と2人で声を合わせて意気揚々と保育室に戻っていきました。

<5歳児T君>

花粉症があり事務所に目薬をつけてもらいに来ていました。つけ終えた後になかなか保育室に戻りたがらないT君。看護師に聞くとお友達に泣いていると思われるのが嫌だということでした。そこで私はT君の気持ちに共感した後 「じゃあさ、“だって花粉症だからしょうがないんだもん!” ってみんなに言ってみたら?」と提案しました。すると「そっか!」と急に立ち上がり「だってかふんしょうだからしょうがないんだ・・・」と何回も呟きながら階段を上がっていきました。

どちらの例も心の発達がしつかりと読み取れる事例です。

“人はみな感情があり、その場の状況に合わせて自分の気持ちと折り合いをつけていく”
子ども達の心の成長は、私達大人に改めて人の中で生きる力の学び直しをさせてくれています。

副園長 若山 望
(「櫻」つくしんぼ・そよかぜ 2023年3月号より抜粋)