コラム

子どもの心に共感しつつ伝える

お子様達はどのクラスもようやく今年度の生活環境に慣れ、のびのびと遊んだり探索や発見に目をキラキラとさせて楽しむ姿が多くなりました。先日の懇談会では、ご家庭での育児を伺う機会にふれ、改めて保育園とご家庭が日常の些細なことでも共有し合う事の大切さを感じました。

2歳児M君連絡帳の内容より

家族でよく川に行き、川の中に石を投げて遊んでいるとのこと。ある日買い物に出かけた時のエピソードを知らせてくれました。同じような石を見つけ投げてしまったM君。当然、お父さんに叱られてしまい、泣きながらお母さんの所に駆け寄ったそうです。お母さんに川でいつも投げて遊んでいることに共感してもらいつつも、お店の中は危ないから投げてはいけないことを諭されお父さんに謝りにいったそうです。
子どもの心にはしっかりと共感し、公共の場でのマナーを育てられている姿に感動しました。

5歳児Mちゃん

つい最近まで治療の度に大泣き、患部を手で覆い見せてくれず、大したことが無さそうな時には流水でサッと洗うだけにしたり、なんとかミツロウだけ塗らせてくれて終えることが多かったMちゃん。5歳児になり「私は痛いのが苦手なの!」「だからやらない!」目に涙をためながらもしっかりと言葉で伝えます。
トゲが刺さっていたので「そっか、痛いのは嫌だよね。みんな苦手だと思うよ。」と共感しながら一緒に考えていけるように話してみました。刺さったままの痛さや一瞬の我慢、しばらく絆創膏で覆い皮を柔らかくしてから抜くと痛みが和らぐことなどなど。Mちゃんの答えは絆創膏でした。翌日には「お家でとれたよ」と笑顔で報告に来てくれました。

人はみなそれぞれ感性があり、その感性は他人が全く同じに感じることは不可能です。たとえ小さな子ども達でも、その子なりの感じ方や経験値から予測する感性はそれぞれです。いつでもどんなふうに感じているのかな?と考えてみることは心を知る上でとても大切なことですね。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2023年6月号より抜粋)

”子どもの心”について

保育園で生活をするお子様達は、自分の思いを上手に言葉を使い伝えることがまだまだ難しい年齢です。0歳児の赤ちゃんだけでなく、言葉を使うようになった幼児部のお子様でも、言葉を選んで自分の気持ちを伝えたり、状況を相手に説明するなど、言葉を使ってコミュニケーションを取りながら生活することは難しいものです。子どもの気持ちがよく分 からずに大人が戸惑い悩んでしまったり、また、子ども同士がうまく思いを伝えられずに、お友達と喧嘩になってしまうのも当然ですよね。

子どもの思いを理解し受け止め共感したり、時には気持ちに寄り添いながら言い聞かせる等、子どもの心を感じながら子どもの身になって考えていく生活は、子育てのコツとも言えます。そして、たくさん共感してもらえた心の基盤が、今後の心の成長の糧となっていくようです。

1歳児 S君

新入園児のお子様が朝泣きながら担任の所へ手を伸ばしていました。担任は「えらいね!ママバイバイだね!また来るもんね!遊ぼー !」 と励 ま している姿 を じーっと見ていたS君、「あい!」と自分が手に持っていた車の玩具を手渡そうと差し出します。「S君ありがとう!」「どうぞだって良かったね!」と担任、それでも泣き止まないので今度は可愛い小さな手で〝いい子 いい子 ″ をす るように頭を撫で始めました。こんなに小さくてもしっかり共感!とても微笑ましい姿にみんなで癒された一コマでした。

お子様達の仕草や目線・表情・会話・行動などから感じる”子どもの心”をお伝えしたり、ご家庭で感じられた姿もお知らせ頂きながら、皆様と一 緒に”子どもの心”の理解を深めていきたいと思います。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2023年5月号より抜粋)

爽やかな5月、遊びの幅を広げていきます

令和5年度が始まり、早いもので一ヶ月が過ぎました。新しく入園されたお子様達も、園生活に慣れて安心して過ごせるようになってきているようです。

連休明けに登園する時には、多少気持ちが乱れるお子様の姿も予測されますが、今のお子様達の姿を見ているとすぐに慣れますので、あまり心配せずお休みをしないで登園して欲しいと思います。

5月は、4月に引き続き心の安定感を大切に、年齢発達に合わせて、お子様の興味関心を刺激するような環境を整えながら様々な遊びを取り入れていきます。

自分の好きな遊びを見つけて楽しく遊ぶ、没頭して遊びに取り組む姿は、心の安定感があってこそ見られる主体的な姿です。担任たちが用意する楽しい遊びや保育環境も心の安定がなければお子様たちは受け入れようとしません。

心の安定のためには、早寝、早起き、しっかり朝食をとるなどご家庭での生活習慣を整えることも、大きく影響します。連休中にお出かけをして疲れが残ることもありますが、通常の生活リズムで安心して過ごすことが“心の安定”の基盤作りとなりますので、協力をよろしくお願い致します。

5月はお子様達が大好きな園外へのお散歩にもたくさん出かけます。爽やかな風を受けながら、五感を通して受ける刺激は、成長発達に大きな影響を与えます。

近隣の畑に植えられている野菜の苗や季節の花を発見するお子様達、特に幼児の場合には「あれは○○のお野菜の苗だよ」「○○の花だね」「木によって葉の色や形が違うね」など具体的に声を掛けると知識欲も増していきます。保育園でも5月中旬頃に夏野菜の苗植えを計画しています。

また幼児は、戸外遊びの機会を存分に取り入れながら、さらに遊びの幅を広げていきます。行事予定にもありますが、クラスごとに遠足に出かけます。

年齢によってねらいは異なりますが、楽しい経験を通して様々な刺激を受けること、自分のことは自分ですること(持ち物の管理)や、公共の場での約束事を知って覚えること、また遠足で体験したことをご両親に話したり、絵に表現するといったことをねらいに進めていきます。

「櫻」園長 若山 剛
(「櫻」おひさま 2023年5月号より抜粋)

「○○と」、「○○も」

子どもと先生、それから子ども同士が心をつなぐ、心を放つ、そのつながりになるキーワード、一番大切な言葉として、例えばダイチャンと、タッチャンに登場してもらうと、先生も一緒にダイチャンと遊ぶからね、ダイチャンと一緒ね、ダイチャンも一緒ねというように「○○も、先生も、ダイチャンも」それから「ダイチャンと、先生と、タッチャンと」というように「~も」の「も」という言葉と「~と」の「と」という言葉、それを保育の中でたくさん使ってください。(中略)会話の中で「も」と「と」をたくさん使うと心の共有を図る働きがある。一方で、「~は」と「は」を使うときには異なる、と著書の中で記している言語学者、幼児教育の専門家がおられます。

保育に限らず、家庭の中で、親子の会話、夫婦の会話、兄弟の会話の中でも「と」と「も」を使っていることが多いように感じます。

つまり「と」「も」とも(共)に、大切な思いを共有できていると自然と会話の中で使うことが多くなる2文字なのかも知れませんね。皆様はどのように思われますか。

「櫻」園長 若山 剛
(「櫻」つくしんぼ・そよかぜ 2023年3月号より抜粋)

次年度の学年の姿を感じる成長

今年度も残り1か月となりました。最近のお子様達からは、次年度の学年の姿を感じる成長を多く見かけます。

<4歳児 Mちゃん>

事務所にお友達と2人で紙をもらいに来ました。 「A4のかみを10まいください!」私が 「じゃあ数えててね」と言って1枚ずつ順番に手渡していきました。お友達は私の手から離れる時に数えています。
「1・2・3・4 ・・・」するとMちゃん「ちがう 1・2、1・2 でしょ!」と自分の手に渡された時にカウントします。もうすぐ5歳児になる2人がどのように折り合いをつけるのか、私はあえてそのまま何も触れずに渡し続けました。Mちゃんの言葉を気にせず、私の手から数えるお友達の唱え方に合わせ始めたMちゃん、「・・・9・10! これでおわりだよ。5まいずつだ!」「おしまい?大丈夫?」と尋ねる私に、「うん!」と2人で声を合わせて意気揚々と保育室に戻っていきました。

<5歳児T君>

花粉症があり事務所に目薬をつけてもらいに来ていました。つけ終えた後になかなか保育室に戻りたがらないT君。看護師に聞くとお友達に泣いていると思われるのが嫌だということでした。そこで私はT君の気持ちに共感した後 「じゃあさ、“だって花粉症だからしょうがないんだもん!” ってみんなに言ってみたら?」と提案しました。すると「そっか!」と急に立ち上がり「だってかふんしょうだからしょうがないんだ・・・」と何回も呟きながら階段を上がっていきました。

どちらの例も心の発達がしつかりと読み取れる事例です。

“人はみな感情があり、その場の状況に合わせて自分の気持ちと折り合いをつけていく”
子ども達の心の成長は、私達大人に改めて人の中で生きる力の学び直しをさせてくれています。

副園長 若山 望
(「櫻」つくしんぼ・そよかぜ 2023年3月号より抜粋)

発語前でも…

今月は保護者の方から頂いた“子どもの心’’をご紹介させて頂きます。

1歳4か月Eちゃん

おねえちゃんが怒られて泣いてしまった時に、近くにいたEは側にかけより、まるで「どうしたの?だいじょうぶ?」と言っているように、なでなでしてあげてギューしてあげていました。 なんて優しい子なんだ…と泣きそうになったのと、1歳でこんな気遣いができるんだ!と感動し ました。

1歳3か月H君

会場から出て行こうとするH···。みていると出口でピタッと止まり、それ以上行かない感じ・・・「いっていいのかな?どーしょーかな?」と考えているような後ろ姿で見ていて感心しました。

どちらのお子様も姿が想像できますね。言葉で発することはまだまだ難しい年齢です。でも、こうして近くにいるご家族が心を読み取り、受け止め、理解してもらえる経験の積み重ねが、発語やコミュニケーション、そして、何より豊かな心の育ちに繋がります。

このようなご家族の温かな見守りが嬉しいです!

副園長 若山 望
(「櫻」つくしんぼ・そよかぜ 2023年2月号より抜粋)

13年後の自分へ

1月8日(日曜日)、翌日に成人式を迎える卒園生(43期生)と保護者の皆様が保育園を訪ねて下さいました。その成り行きはというと、13年前の平成20年度の卒園生保護者の方から子ども達が書いたメッセージや写真を四角い缶に詰め、13年後の成人式を迎える前日に保育園に皆で集まって開封したいという企画の提案から始まりました。

子ども達も担任たちももちろん大賛成、皆で協力して、なにを入れるかを相談をし、一人一人がメッセージや絵をかいて、写真等と合わせて缶に詰めました。卒園式当日、平成35年1月8日、成人式前日に保育園に集まって再会した後に開封することを約束し、タイムメッセージとして封印したのです。13年の間、私の書棚に大切に保管してあったものを8日に皆で開封したのです。

当日は卒園生27名、保護者18名が集まって下さいました。当時の担任3名(内現役2名)も参加させて頂き懐かしい会を催すことができました。当時の担任が一人一人の名前を呼んで袋に入ったメッセージを手渡すと“懐かしい~”と大騒ぎで友達と笑い合いながら開封する子、愛おしそうに開封して微笑みを浮かべカバンにしまう子などそれぞれでしたが、嬉しそうでした。

皆が立派に成長され、それぞれが目標に向かって歩んでいる様子を本人や保護者の方から伺うことができたことは、私たち地域に根ざす保育園として大変喜ばしい出来事でした。これからも見守っていきたいと思っています。

「櫻」園長 若山 剛
(「櫻」つくしんぼ・そよかぜ 2023年2月号より抜粋)

人との触れ合いの中で生まれる力

~相手を知る、我慢強く、社会性~

2学期の終業式に、幼児クラスのお子様には『手作りすごろく』をお渡ししました。年末年始にお楽しみいただけましたでしょうか。

スマートフォンやタブレット端末、ゲーム機などが進化して画面の向こう側に存在するであろう対戦相手やコンピューターとの遊びが多くなっている昨今ですが、昔ながらの『すごろく』の遊びには、下記のような育つ力がたくさん含まれていると思います。

  • 一緒に遊ぶ相手とのやりとり(コミュニケーション能力、相手との競い合い)
  • サイコロやコマを扱う動作(力加減や指先への意識)
  • 文字や数字に触れる(拾い読みの機会や数と量との一致)
  • 相手の順番を待つ(社会性、ルールの理解)
  • 最後の結果が出るまで終わらない(勝敗の理解、我慢強さ)

などの要素が詰まっています。トランプやカルタなども同様です。

すごろくは、ゲーム機のように「思い通りにならないから『リセット』ボタンを押してやり直す」、AI相手のゲームにありがちな素早く進み、すぐに自分の順番にする事など、自分の都合が優先されることはありません。社会性が育つ4歳児以降には存分に経験させてあげたい遊びの一つと考えています。

「白樺」園長 品川 晃彦
(「白樺」もえぎ 2023年1月号より抜粋)

あけましておめでとうございます

“日本の社会が人々に温かく、一人ひとりが安心して心穏やかに過ごせる暮らしを願う”
今年も祈願してきました。

“子ども達がのびのびと安心して過ごし健やかに成長できる場所でなければならない保育園、そしてそこにいる大人(保育士のみならず)は、“子ども達が安心して自己発揮し、明るく楽しく過せるように環境を整えながら、全ての子ども達を可愛がり愛情あふれる関わりを重ねられる人でなければならない’’、改めて子ども達の育ちを保障する大人の責任についても、深く心に刻む年明けでした。

「あけましておめでとうございます!ことしもよろしくおねがいいたします!」
背筋を伸ばし、相手の目を見てはっきりとした口調で堂々とご挨拶、お辞儀もきちんと行う5歳児。お正月、ご家族にたくさん褒めてもらえたことがうかがえます。年末年始休み明け、久しぶりの登園日に「泣いてしまうので は?」と、乳児部の保育士達は子ども達一人ひとりが好んで楽しんでいた遊びを用意して待っていました。一目散に遊び始めるT君、家族との離れ際は涙したものの、自ら気持ちを切り替え遊び始めるMちゃん。保育園の生活は、子ども達の意欲とそこに関わる大人達との信頼・共感、そしてご家族の方との信頼・協力が基本となっています。年の始めに見せてくれたこの子ども達のように、“子どもの輝かしい心の瞳”が中心である生活となるよう、保育園が温かな場所でなければいけないという基本を大切に重ねていきたいと思っています。”子どもの心”を保護者の皆様・担任達とたくさん語り合い、一人ひとりのお子様の成長を楽しみに、今年もまた保育に励んでいきたいと思います。

よろしくお願い申し上げます。

副園長 若山 望
(「櫻」つくしんぼ・そよかぜ 2023年1月号より抜粋)


「大丈夫だよ、オムツしてるから」

「これから車に乗るから○○ちゃんもトイレに行っておこうよ」と2歳か3歳の子に話しかけるお母さん。子は考えている様子。

間髪入れずに「大丈夫だよ、オムツしてるから」とお父さん。結局、子の反応や意思表示はないまま、手をつながれて行ってしまいました。

 職業柄その後、どうなったのか気になってしまいました。

 これは立川のショッピングセンタートイレ前で私が見かけた光景です。皆様のご家庭だったらどのようにされたでしょうか。

“大丈夫だよ、オムツしてるから…” 気になるのはこの言葉です。
車の中で漏らして欲しくないお父さん、お母さんにとっては確かオムツをさせていれば大丈夫です。

子どもも座席を汚さずに済むわけですから大丈夫ということになるかも知れません。
ただ、子にとってはオムツにオシッコが出れば不快感を抱き本当は大丈夫とは言えないはずですが、“3回してもサラサラ”というコマーシャルが影響しているのでしょうか。

お母さんが“トイレにいっておこうよ”と問いかけた時に、子は自分の排尿感覚、でるか出ないかを自分で感じようとしていたかも知れません。でも、意思表示を待ってもらえず手を引かれて車に乗せられてしまったのかも知れません。

子が自身でオシッコがお腹(膀胱)にあるかを自覚するタイミングを逃さず、トイレ(オマル)に誘う、排尿ができたときに大いに誉める。この日々の繰り返しの中に排泄自立への近道があると思うのです。

たまたま出会った会話の一部ですから、お父さんの“大丈夫だよ”を批判しているわけではありません。衛生面を考えて外出先でトイレに行かせたくないという考えもあるでしょうし、もしもの時を考えてオムツをさせておきたいと思うのも当然です。

ただ、子が「オシッコ…」と訴えたり、トイレに誘える時にはトイレでできた方が子にとっては自立に向けて良い経験となるということ、子がオムツに尿がある不快感に慣れてしまうことが自立を遅らせることなど、オムツに頼りすぎない事の大切さを理解して頂きたいと思い、たまたま見かけた実例から書かせて頂きました。

過去に相談を受けた事例の中には、保育園ではトイレで排尿しているのに、お家ではわざわざオムツにはきかえて排尿、排便をする子の例もありました。

トイレで済ませることを教えることの方が自然だと思いませんか。

「櫻」園長 若山 剛
(「櫻」つくしんぼ・そよかぜ 2022年12月号より抜粋)