小さな“おつかい”体験

「しつれいします」、お手伝いを頼まれた幼児の子ども達が事務所のドアを開ける時に、大きな声で得意げに挨拶をしてくれます。「はい、どうぞ、どうしましたか?」と聞くと、「〇〇の部屋のエアコンをつけて下さい」と頼まれた事柄をしっかり相手に伝えることが出来ます。中には「もう一度聞いてくる」と確認しに戻ったり、「えっと、えっと、〇〇の部屋を暖かくして下さい」と頼まれた用事を伝えようと一生懸命考えて言われたままでなく自分の言葉で話す子もいます。

小さい子が「失礼します…」と戸惑われる方もいらっしゃると思いますが、子ども達にとっては大事な経験の場と考えています。各階のエアコンのスイッチは事務所で管理しているため、子ども達が“おつかい”に来るわけです。

担任達も、話す事に自信が持てないお子様や人とのやりとりに戸惑いやすいお子様に用事をたのんで、伝えられた喜びや、ほめてもらう機会を増やしているのです。

また先生に頼まれて「あかを5枚、あおを10枚、緑を8枚下さい」と折り紙をとりに来る事があります。メモ用紙に内容が書いたものを持ってくるのはさくら組さん(3歳児クラス)、ばら組さんになると頼まれた内容を、理解して口頭で伝えて来ます。お子様によって内容を考えて頼んでいることを感じます。

「はいわかりました。まず赤が5枚だね。一緒に数えてね…」と青、緑と順に枚数を数えて、「はいこれでいいですか?」「うん大丈夫」と手渡しをするようにしています。

相手の話、意図を理解して聞く、考えて自分の言葉で相手に伝える、承知してお手伝いをする、出来た事への達成感、子ども達にとっては皆貴重な経験です。

また、我先にと自分が一番でないと気に入らない、友達を押しのけて横入りする姿を見かけることがあります。“子どもなんてみんなそうなんじゃないんですか?”と思われる保護者の方もおられるでしょうが、「順番だね、待っていようね、順番」と言い聞かせること、そして我慢して待つことが出来たときに「一番じゃなくても、待っていたらもらえたでしょ、できたでしょ」「待てて偉かったね」誉めてあげる。

幼いから仕方がないと、身近にいる大人が作法を教えなければ経験することはないでしょう。幼児期の子ども達、特に就学を控えた子ども達には経験が多ければ多いほど覚えて身についていきます。

言い聞かせることはもちろん大切なことです。ただ幼児期には理屈を話すことよりも、その都度、日々の経験の積み重ね、些細なことに子ども達が気付けるように、また大人が意識的に生活をし声を掛けることがことが大切なのでしょう。

衣類をたたむ、履物を揃える、使ったものを片付けること、等々小さな事ですが、大人が気をつけていることを子ども達にも伝えていきましょう。

そしてお子様が意識できたときには、大いに褒めてあげて下さい。

「櫻」園長 若山 剛
(「櫻」おひさま 2024年2月号より抜粋)