コラム

栗ご飯の中の栗って?~食材の元のかたち~

先日、秋の味覚“栗”を使った栗ご飯を午前食で食べました。園の向かいの栗農家の方が丹精込めて作ってくれた“栗”です。

食べる前に、イガの付いた状態の栗(透明ケースに入った状態)を見せて説明する担任に「あれっ?」という表情でお茶碗の栗ご飯とイガグリの栗を見比べるお子様たち。イガグリの栗は茶色…、栗ご飯の栗はクリーム色…。(どれが栗なんだろう?)となっていました。鬼皮や渋皮がありそれを剥いたものであることを説明すると「あ~!」となったものの「実際に栗の実を割って見せてあげれば良かった…」と悔しい思いをしながら話していました。

生の栗の実は、イラストや写真、剥いた栗はマロンケーキなどで店頭でも目にする機会は多くありますが、イガグリはあまり間近で見る機会が少なく、透明ケース越しに見えるイガのとげとげしい姿に「痛そう…」とじーっと見たり、3つ並んで入っている様子に関心を持っていたお子様たちでした。

私が担任をしている20数年前、午前食に鮭の切り身の塩焼きを見て「シャケだ!」「このまま海で泳いでいるの?」というお子様がいて、当時の園長(現理事長)や栄養士に相談して生の鮭を丸々一匹、購入してもらい解体してもらったことを思い出しました。当時のお子様たちも最後、切り身を並べて「こうなっているんだ…」と理解していましたが、内臓や骨などが目の前で捌かれていく様子に興味津々でした。改めて、店頭に並ぶ前の原形に触れる経験の大切さを思い出しました。

担任たちも普段から、見慣れない食材や食べ慣れない食材がメニューに入っている時は、調理室から食材そのものを借りてお子様たちに食べる前に見せ、興味関心を高めるような工夫をしています。写真やイラストなども使いますが、現物は食欲を増すようで効果がとてもあります。

これからが旬の美味しい食べ物がたくさん店頭に並ぶ季節です。お子様とお買い物をしながら食材自身に触れる機会を作ったり、一緒にその食材を調理するなどしていただけると、ご家庭での食事時間がより豊かに展開すると思います。“食欲の秋”を大いに楽しみたいですね。

「白樺」園長 品川 晃彦
(「白樺」もえぎ 2025年10月号より抜粋)

親子で気持ちの受け入れ合いを重ねながら

先月は2学期がスタートしたものの猛暑が続き、引き続き暑さ対策を続けながらの保育展開を心がけていきました。中旬過ぎからは園庭で遊ぶ時間も長くなったり、エアコンを使用しないで過ごせる日もあり、ようやく園外保育や戸外での運動遊びを取り入れることが出来るようになりました。

お子様たちの日々の成長は身体のみならず心も成長しています。我が子の心の成長を実感、素敵なエピソードが届きましたので、お知らせしたいと思います。

1歳児 Hちゃん(連絡帳より)

昨日はHちゃんの成長を感じることがありました。お風呂に入るまでは毎度のこと時間がかかり大変ですが、入ったら入ったで遊びたくて「ふえ~ん!」と泣きます。しかし、「もっと遊びたかったね」「楽しかったよね」と共感すると気持ちも落ち着き「お風呂でる?」「うんっ!」とすぐに切り替え。「切り替えられてえらかったね!すごい(手拍子)!」とほめてあげると、満面の笑みで抱きついてきました。大人でも切り替えるのは難しい…でも頑張る子どもの姿にすごいなあ~。と感心でした。

1か月前あたりに「我が子が言うことを聞かない!共感してあげたい気持ちもあるが時間もないし…」と戸惑われていたHちゃんのご両親。連絡帳内での相談後、まずは子の思いに共感、そして親の思いも伝えていきながら親子で気持ちの受け入れ合いを重ねながら温めてきた関係性が伝わります。

我が子の切り替えの姿から大人の姿を振り返り、子どもからの学びとして捉えられているところがさらに素敵に感じました。子育てはいつでも親子で成長ですね。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2025年10月号から抜粋)

僕はシャワーにする!

年々増加する猛暑日、保育園での生活も室内で過ごす時間が多くなりました。朝のうちの気温が上がり過ぎてはいない時間(うさぎ組からばら組のお子様たちは登園から1時間程度、りす・こあら組のお子様は少し保育室で過ごした後30分~40分程度)、園庭で虫取りなどをしながら存分に汗をかいて遊び、その後プール遊びや水遊び・シャワーなどで汗を流し、さっぱりとしてから昼食を食べ、お昼寝…。

室温や水分補給に気を配りながらも、生涯を健康に過ごすための身体作りをしているこの乳幼児期のお子様たちにとっての夏の生活としては、健康的に過ごせたのではないかと思います。中には夏の疲れからか体調を崩すお子様もみられましたが、感染症が大きく広がることなく過ごすことが出来ました。皆様のご理解ご協力に大変感謝しております。

5歳児R君

前日に身体に痛みがあり受診、たいしたことはなく登園しましたが、看護師と相談したところ、プールへの入水は控えておこうかということになりました。納得がいかず返事をしないでいたR君、「プールの中で楽しく遊びながらお友達とぶつかるとまた痛くなるかもしれないからやめた方が良いかな?ってお話だから、少しだけ入って上がることにする?」と話すことで納得、保育室に向かいました。大人間で入水方法を打ち合わせし、いざプールの時間になると「僕はシャワーにする!」と自ら判断しプールへの入水はしませんでした。

“子どもが自ら考えて判断する” “納得し自分で決めること” とても大切ですね。大人は「え?さっきと言ってることが違う?」と感じてしまいますが、このようにあれこれと言い聞かされた後や、分かってはいるけど主張の方が強くなってしまっていた時などに、子ども自身が再度よく考え直し判断することがあります。

大人に言われてするかしないかを決めることよりもずっと大切なことですよね!

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2025年9月号から抜粋)

思いを言葉で伝える

「どうしたの?」泣いている事に気付いた友達がA君に声を掛けてくれています。
「・・・」「いやなことがあったの?」「・・・」、反応がありません。(4歳男児)
近くにいる先生が、様子を察して「○○だったの?」と聞いてあげると、「うん」とうなづきますが、すっきりとしない表情です。

また、折り紙遊びをしているときに、グループ毎に容器に入った糊がテーブルに用意されているのですが、友達が使った後に遠くの方に容器が移ってしまい、自分も使いたいのに言い出せないでいる。「ぼくも使いたいから貸してって言うんだよ」「みんなで使うから真ん中に置いてよと言っていいんだよ」と大人に助けてもらって、「ぼくも使いたい」と小声で言う。

自分の思いや意志、気持ちを、言葉で表現することが苦手なお子様の姿が気になります。発達の違いや個人差はあるのは当然ですが、大人から声を掛けてもらう、やってもらうことを待っている、受け身の姿勢が目立つように思えるのです。

「○○したい」「いやだ」「ねえ、○○できないからやって」「ぼくが使っていたんだよ、順番だよ」と自分の意思表示が相手に伝わるようにできる事は、安心して生活をするために大切な事です。思いを伝えられないと不安が重なり、心の中が晴れない状態がつづくために自発的に行動することもできません。

特に幼児は周囲の状況を判断して、自分で行動に移せる子にして就学を迎えられるようにしたいと考えています。大人の都合で指示や命令をするのではなく、「周りを見て考えてみよう」「どうしたらいいかな」と周囲の状況を自分で感じて、考えて行動できるように声かけをすることを大切にしています。

自分の気持ちをどのように表したら良いのかもわからない年齢の子ども達ですから、その都度、状況に合わせた応対の積み重ねが必要です。指示や命令で従わせるのではなく、自分で考えて判断する、また行動する機会をなるべく多く作って行き、考えられたときや言えたとき、行動に移せた時には褒めてあげる、その積み重ねが大切なようです。

「櫻」園長 若山 剛
(「櫻」おひさま 2025年7月号より抜粋)

“そうだね、アリさん、いたい痛いだって”

園庭での事です。アリを見つけて “ありさんいた、ありさんいた” と喜んで眺めている2歳の子に呼ばれて、“いたね~” と一緒にしゃがんで眺めていると、走ってきた別の2歳の子が端からアリを踏み潰して回る場面がありました。

“あらあら可愛そう” と私が言うと “踏んだらダメ、痛いよ、可愛そう” と一緒にいた子が叫びました。

“そうだね、アリさん、いたい痛いだって” “やさしく見てあげてね” と言うと “うん” と言って受け入れてくれたようでした。

日常よく見かける場面ですね。

「可愛そうだからやめて!」「アリさんお化けで出てくるよ」と子に怒鳴っているお母さんの姿を見かけたこともあります。その場でつい言いたくなる気持ちもわかります。

ただ、小さいから、まだわからないから…ではなく、些細なことでも敢えて言葉にして伝える、思いを子と共感する機会をもつことも大切だと思ったのです。

その翌日も同じような場面があり遠目に見ていましたが、アリを見つけて喜んでいる子を横目に昨日と同じように踏み潰して走り回っている子の姿がありました。“あら、あら…” と思いましたが、今回は声を掛けませんでした。

難しいですね。アリにも命がある、踏んだら可愛そう…、でも子どもにとっては動くアリにねらいを定めて足をあげて踏むことも遊び…???。知らず知らずに踏んでしまうことはあっても、“わざと踏んだら可愛そうだね”と伝えて行きたいですね。

「櫻」園長 若山 剛
(「櫻」おひさま 2025年6月号より抜粋)

伝言

3歳児Eちゃん

「〇〇へやの??コン・・・?」 「あのね・・・、すずしくするの、あついから」きっとエアコンをつけてほしいことの伝言を頼まれ、事務所にやってきたのでしょう。使い慣れない言葉に戸惑い、 一生懸命に考え、自分の言葉で伝えてくれました。

4歳児T君

「コピーしてください」
「何枚するの?」
「えーと、えーと、」指で数えています。
「先生には何枚って言われたのかな?」
「あのね、〇〇君と〇〇ちゃんと・・・」一緒に遊んでいるお友達を思い浮かべながら、 必要枚数を考えながら数えていました。

毎日のようにお子様たちは何かしら担任に頼まれ、お手伝いとして事務所にやってきます。頼まれたことを意気揚々と伝言に来るお子様たちです。先生が言った言築を呪文のように繰り返しながら、そのままの言葉を必死に伝えようとするお子様、今回の事例のように頼まれた事柄を自分なりに理解し、自分の言葉で伝えようとするお子様、みんな真剣さはそれぞれです。不安なうちはお友達と一緒に来て声にするお子様もいます。

”頼まれたことを自分の言葉で伝える” ”人の役に立つ喜びを感じる” 日常でのこのような些細な経験が、自信となり、覚える力、考える力に繋がっていきます。たくさん経験させてあげたいですね。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2025年7月号から抜粋)

“子どもの心”の理解を深める

保育園で生活をするお子様達は、自分の思いを言葉で伝えることがまだまだ難しい年齢です。0歳児の赤ちゃんだけでなく、言葉を使うようになった幼児部のお子様でも、自分の気持ちを上手に言葉で伝えたり、相手に状況を説明するなど、言葉を使ってコミュニケーションを取りながら生活することは難しいものです。

子どもの気持ちがよく分からずに大人が戸惑い悩んでしまったり、また、子ども同士がうまく思いを伝えられずに、お友達と喧嘩になってしまうのも当然ですよね。子どもの思いを理解し受け止め共感したり、時には気持ちに寄り添いながら言い聞かせるなど、“子どもの心” を感じながら子どもの身になり考えていく生活は、子育てのコツとも言えます。そして共感してもらえた心の基盤が、今後の心の成長の糧となっていくようです。

1歳児R君

お母さんとの離れ際からしばらく泣いてしまうR君。玩具に誘ったり遊び出せるような担任達の工夫は、逆に泣きが強くなり受け入れてくれません。抱っこをしてもらっていると安心するようなので暫くそうすることに…、すると泣かずに周囲を見るようになってきました。’‘抱っこ’’という安心スペースが遊びへの関心に心を向けてきたようです。眠る・食べる・抱っこしてもらう、3つの安心材料が基盤となり、最近では自ら歩いて関心のある玩具を取りに行ったり、時折笑顔もみせてくれるようになってきました。

お子様達の仕草や目線・表情・会話・行動などから感じる“子どもの心”をお伝えしたり、ご家庭で感じられた姿もお知らせ頂きながら、皆様と一緒に“子どもの心”の理解を深めていきたいと思います。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2025年5月号から抜粋)

叱るより、褒めることで人は育つ

“叱るより、褒めることで人は育つ”と先人の言葉が多くありますが、子育てもまさにその通りです。成長したことを褒めて自信を持たせ、次のステップにつなげていく、そして頑張ったことをまた褒めて、喜びや意欲を膨らませていく、その繰り返しです。

ただ、躾なければならない時もあります。わかってほしいこと、伝えたいことを言い聞かせ、愛情をもって心配する、気持ちを繰り返し伝えていくことが大切です。

「できないと学校にいけないよ」「これじゃ赤ちゃん組のままだよ」など親御さんの不安や感情を子どもに向けるやり方は、子どもの心をいじけさせるだけでなく、不安を抱かせることにつながり、良い解決や結果にならない事は経験からもおわかりと思います。

特に就学を控えたお子様達の中には、期待と不安が入り交じった複雑な思いを持っているお子様も少なくないはずです。「大丈夫だよ」 「考えてできたね」 「支度ができて偉いね」と“これでいいんだ” “ボクを(わたしを)見ていてくれている” “大事に思ってくれている” と感じられるように言葉がけをしたり、褒める機会を、敢えて作ってあげると良いでしょう。

ひとりひとりの成長のスピードは違います。周囲の子と比較したり、できていないことばかりに目が向きがちですが、少しでも変化のあったところ、成長したところに目を向け、その芽を大切に育てるつもりで、ほめたり励ましてあげられると、お子様も安心して力を発揮することができるでしょう。

「櫻」園長 若山 剛
(「櫻」おひさま 2025年1月号より抜粋)

少し自信ないことも乗り越えて

4歳児Aちゃん

ガーゼで頬を冷やしながら事務所にやってきたNちゃん。後ろから泣きながら担任と一緒にAちゃんが入ってきました。二人の様子をみていると喧嘩をしたような様子ではありません。担任がいろいろと尋ねても「ちがう!わかんない!」と泣きながら怒るばかりです。「そうなのか~、じゃあどうしたの?」「わかんない!」「〇〇なの?」「ちがう!」しばらく続いた後に、「やだったの!」急につぶやきました。
どうやらAちゃんにとっては少し自信のないフープくぐりゲームに自らやってみようと参加し、頑張ったにもかかわらずフープがNちゃんに当たって負けてしまったことが悲しかったようです。大人の声掛けをきちんと聴き自分の気持ちに向き合い、泣きながらではありましたが、最後は自ら伝えられたことが一つの自信となったのでしょう、今まではお友達と一緒に事務所への伝言やお手伝いに来ていたのですが、最近は一人で意気揚々とやってきます!私があえて違う質問しても「違うよ。〇〇!」と堂々と返答します。

5歳児Yちゃん、3歳児H君

「〇部屋の暖房消してください」Yちゃんが小声でH君にささやきます。「〇へや、けって」H君、Yちゃんはクスツと笑い再度耳元でささやきます。それでもH君の言葉は変わりません。それでもYちゃんが言ってしまうのではなく、最後までH君に言わせてあげようとする姿に感動しました。

少し自信のないことでも”やってみよう” ”言ってみよう”とする勇気、一年間一緒に過ごしてきた3歳児の子どもの成長を私たち大人と共に喜ぶ5歳児、微笑ましくまた頼もしく感じたエピソードでした。

お子様達の年間の成長は著しいものです!この環境に感謝しながら、今後も励みたいと思います。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2025年3月号から抜粋)

思うようにいかなくても…

「〇〇したいの!〇〇しない!」叫び続けるT君。
「・・・・・・・」ずっと黙り込むMちゃん。
「エーン!ギャー!」泣き怒るSちゃん。
わけもなく走り回っているA君…

子ども達は自分の思うようにならない事があると、その子に出来る精一杯の方法でその思いを表現しています。こんな姿を見かけるとまずは周囲の状況を確認し、様子を見ます。そして「どうしたの?」と心配している私の気持ちを伝えてみます。4・5歳児くらいになるときちんと言葉で伝えてくれる子もいますが、分かりにくいことも多々あります。やりたかった気持ち、嫌だった気持ちに共感したり、時にはただ傍に一緒にいるだけなど、寄り添っているうちに徐々に気持ちが落ち着き話し始める子もいます。納得がいかず怒り続ける場合にはじっくりと問いたり、担任やクラスの様子など状況確認することもありますが、ほとんどは「思うようにいかないことはわかっているけれど」ということが多いようです。最後は「えらかったね!今度〇〇しようね」「うん」と切り替え気持ちが変わっていきます。泣いたり怒ったり走り回ったりしながらも時間の経過の中で自分の気持ちに折り合いをつけているようです。

生き生きと過ごす3学期、このように感じる場面が多くあります。‘‘子どもを信じ自分の気持ちには自分で折り合いをつけられるよう見守っていく” 大人の姿勢が大切なのでしょうね。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2025年2月号から抜粋)