「わかってはいるけど…」

子様たちは遊戯や表現遊びなど、保育室の中はもちろん、園庭でも学年問わずに楽しんでいます。音楽がなるとすぐに踊りだしたり、その姿を見て身体を揺らして楽しむ乳児のお子様達、狼が出てくる表現あそびが始まるとクラスに関係なく逃げたり隠れたり・・・。とても微笑ましい光景を多く見かけます。

3歳児 H君

2階のテラスから塗り絵が一枚ヒラヒラと1階テラスに落ちてきました。その後、激しい泣き声が続き、どうしたのかな?と心配していると、しばらくして担任と一緒に塗り絵を拾いに降りてきました。玩具で遊んでいた時にお友達と喧嘩になり、気持ちを切り替え、塗り絵を始めたばかりに片付けの時間となってしまい、投げてしまったとのことでした。もちろんどこまで塗ったら終わりにするかなど、いつもは自分自身が決めて片付けているので、担任もその姿に驚き対応しても怒るばかりだったとのことでした。担任とのやり取りの後、ようやく気持ちを切り替え、取りにきたそうです。

いろいろな気持ちが重なり、自分でも自分の気持ちに折り合いがつけられなくなってしまったのでしょう。

日ごろ周囲の状況などを受け止め、しっかりしているお子様ほどこのような姿を現すことがあります。 “わかってはいるけど…’’ 小さなお子様が家族と離れる時に、泣きながらも担任に手を伸ばす姿があります。子どもなりに ‘‘わかってはいるけれど、自分の気持ちと葛藤している” そんな健気な姿は、お子様たちの心の成長に大きく繋がっていくのであろうと感じています。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2024年12月号から抜粋)

応答的なやり取りを重ねる

0歳児 A君

担任の動く姿を追い不安そうにお部屋から覗いています。「〇〇先生、行っちゃったね~ 待っているの?」と問いかけると、行った先を指さし頷きます。「じゃあ、望先生と遊んで待っている?」と声にすると、以前一 緒に遊んだことのある玩具を持ってきました。“1歳を過ぎ自由に歩くようになり、自分の意思を人に伝え、人の話を聞いて動きを変える” こんなに小さくても、言葉ではまだ伝えられなくても、しっかりと人としてのコミュニケーションが取れていたこの出来事に、改めて日頃の応答的なやり取りの大切さを実感しました。

小さなお子様たちも、日々の保育園での暮らしの中で、担任達と応答的なやり取りを重ねていくことで、人の話に耳を傾け、その子なりに出来る方法で応えてくれるようになります。

1歳児クラスの子ども達が大好きなドングリを拾い集めることを目的に、手をつないだ相手が時折動いてしまっても「おてて!おてて!」(あっそうだ!と言わんばかりの表情で戻る)など上手にやりとりしながら、無事に園外保育から帰ってきたことにも感動しました。

0 • 1歳の小さな子ども達にも心の動きがあり、その心に対して応答的にやり取りを童ねていくことを今後も大切に過ごしていきたいと思います。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2024年11月号から抜粋)

お友達との共感

4歳男児K君

お友達と手をつなぎ事務所にやってきました。いつもの笑顔がありません。手をつないでいるお友達はおでこに少し赤い傷がありました。状況を聞くと、片付けの際にK君が片付けようとした玩具がたまたまお友達のおでこに当たってしまったとのことでした。お友達も痛そうに涙目ではありましたが、少し我慢している表情でした。困ったK君の気持ちが伝わっていたようです。治療を受けるお友達の表情をのぞき込み、K君も涙目に・・・。心からの「ごめんね」「うん 」お互いの気持ちを思いやる姿に感動しました。

5歳児K君

「キラキラのテープください」一緒に教材室に選びに行きました。金色のテープを渡そうとしたのですが「僕はこれが好きだけど赤いのがいい!」とK君。「好きな色でなくていいの?赤でいいの?」と再度確認しましたが、赤いキラキラテープ(マイラップ)をもって保育室に戻りました。教材室から出る時に「〇〇ちゃん、きっと喜ぶな~~」と嬉しそうにスキップするような走り方で出ていきました。

お友達の喜ぶ姿をイメージし、自分の喜びにしているK君の姿に5歳児の協調する喜びを実感しました。運動会に向けての活動が多かった9月、しっかりとお友達との共感も積み重ねている子ども達です。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2024年10月号から抜粋)

子どもの感性

「あいす!あいす!・・・」キッチンカーの看板を見て叫び続ける2歳の孫。猛暑の中の外出だったので、食べたいのだろうと思い、祖母心で購入し「はい!」とスプーンでひとさじすくい口に運ぼうとした瞬間です、「やあだ~!やあだ~!わあああ~!」大泣きをして座り込み動きません。

自分ですくい食べたかったのかと思い見かねた祖父が再度購入。甘やかしているな~と反省しつつもその後を見守っていると、一向に口にしません。ずっと大切そうに両手で持ち歩きます。

アイスは溶ける、前には進まない 。もう限界というタイミングで父親と連携し、大好きな車に気持ちがそれた瞬間に祖父が預かりなんとか片付けました。

以前に5歳児くらいのお姉さんから砂場の容器で綺麗なカップアイスを作ってもらい喜び、大切に持ち歩いていたことを思い出しました。きっとその時の遊びを思い出したのでしょうか?

大人は「あいす!」と叫ばれると食べたいのであろうと勝手に想像しますが、“大切に持ち歩く姿”から考えると明らかに違いました。まだ生活経験の少ない乳幼児にとって、このようなことは他にもたくさんあるのではないかと実感しました。

私事ではありましたが、経験から想像して思い描き主張する子どもの思いと、大人の捉え方のズレを実感し、このコーナーで取り上げたく思いました。皆様が感じられたこともぜひお知らせください。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2024年9月号から抜粋)

自分なりに判断する

最近のばら組さん、頼もしい姿がちらほらとみられるようになってきました。

「お片付けしてきてくれる?」とお手伝いを頼まれた白樺5歳児T君R君

砂場のバケツを持ちサッシの前でちらちらと事務所を覗いては2人でなにやら話しています。困っていそうな表情も感じられたので、「どうしたの?」と近寄りました。「だってあけていいのかわからない…」いつもは開いていることが多い園庭への出口のサッシが閉まっていたのです。「このバケツをもどしにいくんだけど…」「えらいね。勝手に開けてはいけないのかな?って考えていたのね。片付けが済むまで先生がここにいればいいかな?」と話すと「うん!」と張り切って片付けさっさと戻り「ありがとう!」と2階に上がっていきました。

「〇〇君呼んできてくれる?」と3歳児の入室を頼まれた櫻5歳児Yちゃん

三輪車に乗りなかなか担任の呼びかけに気が付かない3歳児、その様子を気にしながら見ていたYちゃん。
3歳の担任もその姿に気が付きYちゃんにお願いしました。「まだのりたいの?せんせいよんでるけど…」「もうちょっとのりたいの?」と語りかけます。お姉ちゃんに気持ちを受け止めてもらえたからでしょうか、その後三輪車から降りてYちゃんと手をつなぎ2階へ上がっていきました。

大人から頼まれた内容をそのまま行うのではなく、周囲の状況や相手の気持ちを考え、自分なりに判断をしている姿に関心しました。”子どもの心”とはいえ、大人顔負けのエピソードですね。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2024年7月号から抜粋)

健やかな成長の基盤

新年度のスタートから2か月が経ちました。4月当初の不安そうな表情や小さな子供の泣き声、保育室に慣れずテラスや園庭で食事をとったり、寝付いていてもすぐに起きてしまうなどの姿は一切なくなりました。どのお子様たちも今年度の保育園の生活を受け入れ、自己発揮し始めている姿に嬉しく感じます。

2歳児Rくん

4月から入園したR君。保育士達が用意した遊びが本人の関心が高いものであったこともあり、すぐに遊び始めていましたが、食事や午睡になると不安が高まり泣いてしまったり、あまり食べられない眠れない…という日々が続いていました。5月中旬あたりからでしょうか、そのような姿はなくなり笑顔で過ごし、好きな物をしっかり食べたり、存分に身体を動かした日にはぐっすりと眠るようになってきました。クラスの子ども達の遊びに興味をもち一緒に参加してみたり、担任やR君との関りが多い大人に自ら近寄り、R君なりの言葉を自ら発するようになってきました。これからの成長が楽しみです。

R君に限らず、新しい生活を受け入れ保育園での生活に安心感を抱いてくれるようになると、お子様たちはみんなよく遊び、よく食べ、よく眠る(りす組~さくら組)のようになります。中には言葉の発達を心配していたお子様が言葉を使うようになったり、やり取りが難しかったお子様が目線を合わせて聞いてくれたり、その子なりの表現で気持ちを伝えてくれるようになるなど、どんなに小さくても”一人の人”らしい姿を見せてくれます。お子様の健やかな成長には”安心して生活を送ること”の基盤が一番ですね!

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2024年6月号から抜粋)

コラム「子どもの心」について

保育園で生活をするお子様達は、自分の思いを上手に言葉で伝えることがまだまだ難しい年齢です。0歳児の赤ちゃんだけでなく、言葉を使うようになった幼児部のお子様でも、自分の気持ちを上手に言葉で伝えたり、相手に状況を説明するなど、言葉を使ってコミュニケーションを取りながら生活することは難しいものです。

子どもの気持ちがよく分からずに大人が戸惑い悩んでしまったり、また、子ども同士がうまく思いを伝えられずに、お友達と喧嘩になってしまうのも当然ですよね。

子どもの思いを理解し受け止め共感したり、時には気持ちに寄り添いながら言い聞かせるなど、“子どもの心”を感じながら子どもの身になって考えていく生活は、子育てのコツとも言えます。

そしてたくさん共感してもらえた心の基盤が、今後の心の成長の糧となっていくようです。

1歳児R君

たくさんの新入園児を迎えたこあら組さん。りす組の時から保育園で生活をしているお子様たちは、泣いてしまう新入園児のお子様に関わる担任たちの姿を見て状況を感じるのか、ちょっとしたことでは大人を求めることなく、お子様同士で遊び始めます。そんなある日コンビカーに乗って遊んでいたR君が寂しそうにコンビカーに乗り止まっていたお友達に気づき、腕を伸ばして必死に呼びます。「おっでー、おっでー」まるでお兄ち ゃんのような仕草に、お友達も表情が一変、笑顔でR君についていきました。

お子様達の仕草や目線・表情・会話・行動などから感じる“子どもの心”をお伝えしたり、ご家庭で感じられた姿もお知らせ頂きながら、皆様と一緒に“子どもの心’’の理解を深めていきたいと思います。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2024年5月号から抜粋)

目には見えない心の成長を感じて

3学期に入り、0歳児クラスのお子様も、一 時保育で定期的に利用しているお子様も含めてお友達への意識も芽生え、登園してくるお友達に「〇〇ちゃん、おはよう!」と挨拶をしに来てくれたかのように近寄り、お顔を近づけます。また、感染症が治り久しぶりに登園してきたお友達を出迎える笑顔は、まるで「ひさしぶり~ !まっていたよ!」と言わんばかりの表情です!

4歳児Kちゃん

手の指のささくれが引っ掛かり気になって仕方がなく、事務所にやってきました。
「あ~これは気になるよね~」と言いながら爪切りを出した時です。
「あのさ、前切ったね。」
「?」私ははじめいつの時のことを言っているのかわからずにいました。
「あそこで、座って!」と説明が続きます。
「あ~、足の爪切った時?」と2年以上も前のことを思い出し聞いてみました。嬉しそうに頷きます。当時爪を切ることが怖くて嫌がり、ご家庭でも戸惑い相談を受けていました。その不安と闘いながら両足1 0本きれいに切らせてくれた時のことを私も思い出しました。日々の暮らしの中での“小さな挑戦 !” しっかりと覚えているんですね !

1歳児Yくん

近頃やっと立てるようになったお友達のRちゃんがつかまった先はY君の手です。どうするのかな?と、半分ハラハラしながらも見守る担任、Y君はつかまるRちゃんの動きに合わせてゆっくりと前に進んでいたそうです。驚きと喜びの感動を私に伝えてくれました。

保育園での生活は、様々な子ども(言葉の発達・運動発達みな様々です)がいて日々一 緒に過ごしています。ドキドキしたり、うまく話せず戸惑ったり泣きさけんだり、じっと動かず見ていたり ・ ・・。そんな姿も保育士達の気持ちを受け止める関わりや、子ども達同士の自然な受け入れ合いの中で、確実に成長の芽を膨らませていく、目には見えない心の成長がたくさん感じられる今日この頃です!

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2024年2月号から抜粋)

年末年始のお休み明け

新年、あけましておめでとうございます。

“日本の社会が人々に温かく、一人ひとりが安心して心穏やかに過ごせる暮らしを願う”
今年も祈願してきました。

今年は、新年早々から災害や事故の報道に驚き、現地の方々のお気持ちを察し、心痛めるスタートとなりました。一刻も早く平穏を取り戻せるよう願うばかりです。

毎年のことですがこの年末年始のお休み明けは、お子様たちの成長を実感します。1週間(長いお子様は2週間以上)保育園をお休みし、身体はもちろんのこと心の成長も大きく逞しさを感じます。

薬をつけることに不安が高い5歳児Mちゃん、はじめは大泣きをしながら〇〇で避んでいたらこうなっちゃった~ !」と必死に訴えます。「そっかあ、痛かったね。見せてね」と言うと指先のすりむき傷を差し出しながら「私、こういうの苦手なの !痛いの嫌なの!」と語り始め「そうだよね!知ってるよ!でもこうして見せてくれるし、薬の覚悟もできていてすごいね!」と会話をしているうちに涙は止まり、手当てが終わるまで落ち着いて出来ました。

気持ちを受け止めてもらえた安心感、“苦手だけどちょっと頑張ってみよう” と思えるようになるまでの過去の経験、日々の積み直ねの中で確実に成長していくお子様たちです。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2024年1月号から抜粋)

学年クラス関係なく

今年の10月は天候も良く、秋の自然に親しみながら園外保育や遠足など、存分に楽しめたようです。日頃の園庭での遊びも、学年ごとに一段とのびのび意欲的に楽しむ姿が多くなりました。そんな中、きょうだい関係なく小さなクラスの子ども達と幼児の子ども達が微笑ましく遊ぶ姿も増えてきました。

3歳児S君

1歳児クラスのYちゃんと手をつなぎお砂場に向かうS君。大きなスコップを持ちどうするのかな?とみているとそのまま手をつなぎながらすくって山作り、扱いにくそうにしながらも離しません。そこへ他の幼児がやってきて参加、S君はスコップを手放しYちゃんと手をつないだままわんばく砦(幼児用)に向かいます。暫く立っていましたがYちゃんがまだ登れないことに気づいたのでしょう。何やら話しかけ一人で登 っていきました。ひとり立ちすくむYちゃん、どうするのかな?とみているとじっと待っています。滑り台をおり駆け寄るS君でしたが、ほんのわずかな差で、幼児たちが近くを走り回る姿に危険を感じた1歳児の担任がYちゃんを誘い砂場に戻っていきました。二人の思いは分かりませんが、とても温かな光景でした。

3歳児N君

ちびっこランド(乳児用)の中、きょうだいでない1歳児Rちゃんと一緒にいたN君。揺れる梯子に足をかけるRちゃんを見守るように傍にいます。私が近寄ると「だってY君(Rちゃんの兄)まだ着替えているから...」とのこと。後から担任に話すと3人はとても仲良しで、一緒によく遊んでいるようでした。

日常を保育園という生活環境の中で過ごすお子様達。学年クラス関係なく好きなお友達、お気に入りの子を見つけ親しみをもち遊ぶ姿に、大人の介入を必要としない子ども同士の時間があり、会話がなくとも信頼感を得て一緒に過ごす関係性に感動しました。子ども達の時間、温かな感性、素敵ですね。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2023年11月号より抜粋)