叱るより、褒めることで人は育つ

“叱るより、褒めることで人は育つ”と先人の言葉が多くありますが、子育てもまさにその通りです。成長したことを褒めて自信を持たせ、次のステップにつなげていく、そして頑張ったことをまた褒めて、喜びや意欲を膨らませていく、その繰り返しです。

ただ、躾なければならない時もあります。わかってほしいこと、伝えたいことを言い聞かせ、愛情をもって心配する、気持ちを繰り返し伝えていくことが大切です。

「できないと学校にいけないよ」「これじゃ赤ちゃん組のままだよ」など親御さんの不安や感情を子どもに向けるやり方は、子どもの心をいじけさせるだけでなく、不安を抱かせることにつながり、良い解決や結果にならない事は経験からもおわかりと思います。

特に就学を控えたお子様達の中には、期待と不安が入り交じった複雑な思いを持っているお子様も少なくないはずです。「大丈夫だよ」 「考えてできたね」 「支度ができて偉いね」と“これでいいんだ” “ボクを(わたしを)見ていてくれている” “大事に思ってくれている” と感じられるように言葉がけをしたり、褒める機会を、敢えて作ってあげると良いでしょう。

ひとりひとりの成長のスピードは違います。周囲の子と比較したり、できていないことばかりに目が向きがちですが、少しでも変化のあったところ、成長したところに目を向け、その芽を大切に育てるつもりで、ほめたり励ましてあげられると、お子様も安心して力を発揮することができるでしょう。

「櫻」園長 若山 剛
(「櫻」おひさま 2025年1月号より抜粋)

少し自信ないことも乗り越えて

4歳児Aちゃん

ガーゼで頬を冷やしながら事務所にやってきたNちゃん。後ろから泣きながら担任と一緒にAちゃんが入ってきました。二人の様子をみていると喧嘩をしたような様子ではありません。担任がいろいろと尋ねても「ちがう!わかんない!」と泣きながら怒るばかりです。「そうなのか~、じゃあどうしたの?」「わかんない!」「〇〇なの?」「ちがう!」しばらく続いた後に、「やだったの!」急につぶやきました。
どうやらAちゃんにとっては少し自信のないフープくぐりゲームに自らやってみようと参加し、頑張ったにもかかわらずフープがNちゃんに当たって負けてしまったことが悲しかったようです。大人の声掛けをきちんと聴き自分の気持ちに向き合い、泣きながらではありましたが、最後は自ら伝えられたことが一つの自信となったのでしょう、今まではお友達と一緒に事務所への伝言やお手伝いに来ていたのですが、最近は一人で意気揚々とやってきます!私があえて違う質問しても「違うよ。〇〇!」と堂々と返答します。

5歳児Yちゃん、3歳児H君

「〇部屋の暖房消してください」Yちゃんが小声でH君にささやきます。「〇へや、けって」H君、Yちゃんはクスツと笑い再度耳元でささやきます。それでもH君の言葉は変わりません。それでもYちゃんが言ってしまうのではなく、最後までH君に言わせてあげようとする姿に感動しました。

少し自信のないことでも”やってみよう” ”言ってみよう”とする勇気、一年間一緒に過ごしてきた3歳児の子どもの成長を私たち大人と共に喜ぶ5歳児、微笑ましくまた頼もしく感じたエピソードでした。

お子様達の年間の成長は著しいものです!この環境に感謝しながら、今後も励みたいと思います。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2025年3月号から抜粋)

思うようにいかなくても…

「〇〇したいの!〇〇しない!」叫び続けるT君。
「・・・・・・・」ずっと黙り込むMちゃん。
「エーン!ギャー!」泣き怒るSちゃん。
わけもなく走り回っているA君…

子ども達は自分の思うようにならない事があると、その子に出来る精一杯の方法でその思いを表現しています。こんな姿を見かけるとまずは周囲の状況を確認し、様子を見ます。そして「どうしたの?」と心配している私の気持ちを伝えてみます。4・5歳児くらいになるときちんと言葉で伝えてくれる子もいますが、分かりにくいことも多々あります。やりたかった気持ち、嫌だった気持ちに共感したり、時にはただ傍に一緒にいるだけなど、寄り添っているうちに徐々に気持ちが落ち着き話し始める子もいます。納得がいかず怒り続ける場合にはじっくりと問いたり、担任やクラスの様子など状況確認することもありますが、ほとんどは「思うようにいかないことはわかっているけれど」ということが多いようです。最後は「えらかったね!今度〇〇しようね」「うん」と切り替え気持ちが変わっていきます。泣いたり怒ったり走り回ったりしながらも時間の経過の中で自分の気持ちに折り合いをつけているようです。

生き生きと過ごす3学期、このように感じる場面が多くあります。‘‘子どもを信じ自分の気持ちには自分で折り合いをつけられるよう見守っていく” 大人の姿勢が大切なのでしょうね。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2025年2月号から抜粋)

子ども達だけで解決できる

新年、あけましておめでとうございます。

“日本の社会が人々に温かく、一人ひとりが安心して心穏やかに過ごせる暮らしを願う”
今年も祈願してきました。

毎年感じることですが、この年末年始の休み明けのお子様たちは、心も身体も大きく成長し、頼もしく思います。

休み明けの6日 月曜日、少し寒そうにしながらも久しぶりの園庭をお友達と楽しそうに走り回る5歳児。「本当に怒っているんだから!もう!」強い口調が気になり、様子をみていました。すると、少し離れた所に3~4人の5歳児がいて、そのうちの一人と言い合いをしているようでした。その子も周囲の友達に「仲間に入れてあげようよ!」「〇〇だからさあ~!」と言われ暫くやり取りが続いたようですが、納得がいったのかみんなで避びだしました。その後、新たに「仲間入れて~!」「うん!いいよ~」と6~7人のグループとなり、鬼避びになっていきました。負けん気の強い子、調整が上手な子、それぞれが意見を交わし、大人の介入は一切なく解決し遊び始める就学前の子ども達のたくましい姿に、新年早々子どもの素晴らしさ、この仕事のやりがいを実感させて頂きました。

真っすぐに心温かく生きるお子様達、私たち大人こそそんな姿を見習っていきたいものです。今年も多くのお子様達からたくさんの学びを得られる日々に感謝しながら、保育園が安心して生活できる場所であり続けることに、職員たちと一緒に努力を重ねていきたいと思います。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2025年1月号から抜粋)

火遊びにならないように!

冬の季節が到来し、晴天の日が多くなった反面、空気の乾燥が気になる日も増えました。ニュースでは火災の報道もあり気になっています。

子ども達への安全教育の一環として、昨年度までは七夕飾りのお焚き上げ、秋には落ち葉を使っての焼き芋と安全を確保した上で、園庭で直火を子ども達に見せる機会があり、その時を利用して火の怖さ、炎の怖さを伝えて来ました。

実際にライターの火を見せ、「この小さな火はフッと息を掛けると消えるね」「でもこの小さな火を七夕飾りにつけると…」「ほら、大きな炎になり、吹いても消えない」「どんどんと火が大きくなるね」「これがもしお家の中で起きると火事になる」「だから、ライターやマッチ、チャッカマンなど火がつくものは触ってはいけないよ」「使うときには大人と一緒にね」というような話しをしていました。

ただ、昨今では煙や臭いが地域に迷惑を掛ける等、諸事情により七夕飾りのお焚き上げ、落ち葉を使っての焼き芋など煙が多く発生する催しは今年から控えています。

よって、数年来、実体験からの火の怖さを子ども達に伝えて来たことが、今年はできていないことが気になっておりました。

調理器具がIHのご家庭では、直火を使うことがないご家庭もあることでしょう。

敢えて乳幼児期に火の怖さを伝える必要があるかは、ご家庭でお考えがあると思いますが、怖さを知らないだけに、身近に火気を発生するライターやマッチなどの危険物があると興味本位で触ってしまう可能性もあります。

身近な環境整備をするのは大人の役割です。特に危険が伴うものには注意が必要です。「触っちゃだめ!」と叱る前に、触って欲しくないもの、火気に限らず危険な物は片付けておくか、怖さを言い聞かせ触らない約束をすることも良いでしょう。ファンヒーター、ガスコンロ等の火傷にも十分にお気を付け下さい。

最後になりましたが、今年も一年間、皆様にご協力を頂きありがとうございました。
来年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。

「櫻」園長 若山 剛
(「櫻」おひさま 2024年12月号より抜粋)

「わかってはいるけど…」

子様たちは遊戯や表現遊びなど、保育室の中はもちろん、園庭でも学年問わずに楽しんでいます。音楽がなるとすぐに踊りだしたり、その姿を見て身体を揺らして楽しむ乳児のお子様達、狼が出てくる表現あそびが始まるとクラスに関係なく逃げたり隠れたり・・・。とても微笑ましい光景を多く見かけます。

3歳児 H君

2階のテラスから塗り絵が一枚ヒラヒラと1階テラスに落ちてきました。その後、激しい泣き声が続き、どうしたのかな?と心配していると、しばらくして担任と一緒に塗り絵を拾いに降りてきました。玩具で遊んでいた時にお友達と喧嘩になり、気持ちを切り替え、塗り絵を始めたばかりに片付けの時間となってしまい、投げてしまったとのことでした。もちろんどこまで塗ったら終わりにするかなど、いつもは自分自身が決めて片付けているので、担任もその姿に驚き対応しても怒るばかりだったとのことでした。担任とのやり取りの後、ようやく気持ちを切り替え、取りにきたそうです。

いろいろな気持ちが重なり、自分でも自分の気持ちに折り合いがつけられなくなってしまったのでしょう。

日ごろ周囲の状況などを受け止め、しっかりしているお子様ほどこのような姿を現すことがあります。 “わかってはいるけど…’’ 小さなお子様が家族と離れる時に、泣きながらも担任に手を伸ばす姿があります。子どもなりに ‘‘わかってはいるけれど、自分の気持ちと葛藤している” そんな健気な姿は、お子様たちの心の成長に大きく繋がっていくのであろうと感じています。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2024年12月号から抜粋)

「ばら組のおにいさん・おねえさん、ありがとう!」

先日うさぎ組さんから「広い公園で遊びたい!」という希望があがり、ばら組のお子様たちに相談してみたところ、『ばら組さんが山王森公園までお散歩に連れて行ってあげよう!』ということになり一緒に出掛けました。

前日より「明日はうさぎ組さんと手をつないでお散歩にいくの!」と楽しみにしていたばら組のお子様たち。園庭で遊ぶ事とは勝手が違い、手をつないで公園まで連れていくという『使命感』にお子様たちは目を輝かせていました。

当日の朝も改めて出発前に集まり、どう連れて行ったら良いか作戦会議をしていました。手をつなぐ相手が決まりいざ出発…。優しく「だいじょうぶ?」と声を掛けたり、道路では白線の内側をうさぎ組さんが歩きやすいように速さを意識しながら歩いていました。中には、腰をかがめながら、手をつなぎ相手の目線に合わせて歩く様子もあり何とも微笑ましい光景がそれぞれにありました。

帰り道も公園でたくさん遊び、ちょっと疲れ気味のうさぎ組の事を考えながら年上としての責任感を持ち、優しく保育園まで連れて帰ってくれました。

無事に保育園に到着するとうさぎ組のお子様や担任たちから「ありがとう~」「たのしかった~」と言われ、とても満足そうなばら組のお子様たち…。その目は『達成感』『満足感』に満ち溢れていました。

当園では、異年齢で一緒に生活することにより、自然発生的に関わり合いが生まれ、小さい子への労わりや思いやる気持ち、年上の子への憧れなど、子ども同士の信頼感が一緒に育つような環境整備を行っております。特に年上のお子様たちは、優しく丁寧な関わりを通して、相手が嫌がる動作や言動を察知して無理強いをしない優しさも大きく芽生え育っていくことを大切にしています。

ばら組のお子様たちには今後もたくさん活躍していってもらいたいです。

「白樺」園長 品川 晃彦
(「白樺」もえぎ 2024年11月号より抜粋)

子ども達の声に耳を傾けると…

転んで擦り傷をつくってしまった時、どこかにぶつけて痛くした時、トゲを刺してしまった時など村上先生に処置をお願いしにくる子、エアコンのスイッチやお手紙などお部屋の先生から頼まれてお手伝いに来る子、「あのね…〇〇がなくなっちゃったの」「〇〇ちゃんと喧嘩した!」と相談に来る子などなど、保育園の事務所には毎日たくさんの子ども達が様々な用事で訪れます。

ばら組さんになると、意気揚々と自分の言葉で、用事を伝えてくることが出来るのですが、幼いお子様の中にはお部屋、園庭から事務所に来るまでの間に、先生からの伝言を忘れてしまったり、目的をもって向かったはずが途中で分からなくなってしまうこともあるようです。そんなとき、お子様たちは、自分の言葉に置き換えたり、知っている言葉を頭からしぼりだして、なんとか伝えようと一生懸命です。

先生達のお手伝いをしたい、お姉さんお兄ちゃん気分で自分が役に立っていることに満足感を得ているようにも見えます。

自分の思いが相手に伝わる喜びがあるからこそ言葉を発するのです。

わずかな生活経験の中で培ったことばや、身振り、手振りで一生懸命に思いだし考えながら伝えてきます。

日々忙しい大人時間の中で、「いま、いそがしいの…」と耳を傾けられなかったり、「はいはい…」と子どもの心を先読みして「〇〇なんでしょ!」と大人の考えを押しつけてしまうこと…あるのではないでしょうか。そんなとき、子ども達の心の中は満たされず奇声をあげたり、大人が困るような行動にでることもあります。

一人ひとり意志をもって精神生活を送っている子どもたちです。大好きなご両親に言葉や思いを受け止めてもらえることは何よりも嬉しいのです。

「櫻」園長 若山 剛
(「櫻」おひさま 2024年10月号より抜粋)

応答的なやり取りを重ねる

0歳児 A君

担任の動く姿を追い不安そうにお部屋から覗いています。「〇〇先生、行っちゃったね~ 待っているの?」と問いかけると、行った先を指さし頷きます。「じゃあ、望先生と遊んで待っている?」と声にすると、以前一 緒に遊んだことのある玩具を持ってきました。“1歳を過ぎ自由に歩くようになり、自分の意思を人に伝え、人の話を聞いて動きを変える” こんなに小さくても、言葉ではまだ伝えられなくても、しっかりと人としてのコミュニケーションが取れていたこの出来事に、改めて日頃の応答的なやり取りの大切さを実感しました。

小さなお子様たちも、日々の保育園での暮らしの中で、担任達と応答的なやり取りを重ねていくことで、人の話に耳を傾け、その子なりに出来る方法で応えてくれるようになります。

1歳児クラスの子ども達が大好きなドングリを拾い集めることを目的に、手をつないだ相手が時折動いてしまっても「おてて!おてて!」(あっそうだ!と言わんばかりの表情で戻る)など上手にやりとりしながら、無事に園外保育から帰ってきたことにも感動しました。

0 • 1歳の小さな子ども達にも心の動きがあり、その心に対して応答的にやり取りを童ねていくことを今後も大切に過ごしていきたいと思います。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2024年11月号から抜粋)

お友達との共感

4歳男児K君

お友達と手をつなぎ事務所にやってきました。いつもの笑顔がありません。手をつないでいるお友達はおでこに少し赤い傷がありました。状況を聞くと、片付けの際にK君が片付けようとした玩具がたまたまお友達のおでこに当たってしまったとのことでした。お友達も痛そうに涙目ではありましたが、少し我慢している表情でした。困ったK君の気持ちが伝わっていたようです。治療を受けるお友達の表情をのぞき込み、K君も涙目に・・・。心からの「ごめんね」「うん 」お互いの気持ちを思いやる姿に感動しました。

5歳児K君

「キラキラのテープください」一緒に教材室に選びに行きました。金色のテープを渡そうとしたのですが「僕はこれが好きだけど赤いのがいい!」とK君。「好きな色でなくていいの?赤でいいの?」と再度確認しましたが、赤いキラキラテープ(マイラップ)をもって保育室に戻りました。教材室から出る時に「〇〇ちゃん、きっと喜ぶな~~」と嬉しそうにスキップするような走り方で出ていきました。

お友達の喜ぶ姿をイメージし、自分の喜びにしているK君の姿に5歳児の協調する喜びを実感しました。運動会に向けての活動が多かった9月、しっかりとお友達との共感も積み重ねている子ども達です。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2024年10月号から抜粋)