「大丈夫だよ、オムツしてるから」

「これから車に乗るから○○ちゃんもトイレに行っておこうよ」と2歳か3歳の子に話しかけるお母さん。子は考えている様子。

間髪入れずに「大丈夫だよ、オムツしてるから」とお父さん。結局、子の反応や意思表示はないまま、手をつながれて行ってしまいました。

 職業柄その後、どうなったのか気になってしまいました。

 これは立川のショッピングセンタートイレ前で私が見かけた光景です。皆様のご家庭だったらどのようにされたでしょうか。

“大丈夫だよ、オムツしてるから…” 気になるのはこの言葉です。
車の中で漏らして欲しくないお父さん、お母さんにとっては確かオムツをさせていれば大丈夫です。

子どもも座席を汚さずに済むわけですから大丈夫ということになるかも知れません。
ただ、子にとってはオムツにオシッコが出れば不快感を抱き本当は大丈夫とは言えないはずですが、“3回してもサラサラ”というコマーシャルが影響しているのでしょうか。

お母さんが“トイレにいっておこうよ”と問いかけた時に、子は自分の排尿感覚、でるか出ないかを自分で感じようとしていたかも知れません。でも、意思表示を待ってもらえず手を引かれて車に乗せられてしまったのかも知れません。

子が自身でオシッコがお腹(膀胱)にあるかを自覚するタイミングを逃さず、トイレ(オマル)に誘う、排尿ができたときに大いに誉める。この日々の繰り返しの中に排泄自立への近道があると思うのです。

たまたま出会った会話の一部ですから、お父さんの“大丈夫だよ”を批判しているわけではありません。衛生面を考えて外出先でトイレに行かせたくないという考えもあるでしょうし、もしもの時を考えてオムツをさせておきたいと思うのも当然です。

ただ、子が「オシッコ…」と訴えたり、トイレに誘える時にはトイレでできた方が子にとっては自立に向けて良い経験となるということ、子がオムツに尿がある不快感に慣れてしまうことが自立を遅らせることなど、オムツに頼りすぎない事の大切さを理解して頂きたいと思い、たまたま見かけた実例から書かせて頂きました。

過去に相談を受けた事例の中には、保育園ではトイレで排尿しているのに、お家ではわざわざオムツにはきかえて排尿、排便をする子の例もありました。

トイレで済ませることを教えることの方が自然だと思いませんか。

「櫻」園長 若山 剛
(「櫻」つくしんぼ・そよかぜ 2022年12月号より抜粋)