”優しい心”を生まれ持っている

1歳児T君

0 • 1歳児の子ども達が園庭でのびのびと思いのままに楽しんでいた時のことです。少し離れたところで遊んでいた0歳児のHちゃんが、危ない所に向かいそうになり0歳児の担任と私が咄嵯にHちゃんに駆け寄りました。0歳児の担任の側で遊んでいたO君、急に担任が離れ不安そうに「フンフンフン ・ ・ ・」そこへ1歳児のT君、自分が手に持っていたバケツとシャベルをO君に差し出し、シャベルを回して見せたり中の葉っばをすくってみせたり・ ・ ・、O君もじっとT 君の手先を見つめていました。ときどきO君の表情をのぞき込んではやってみせる、まるであやしてくれているような姿に感動しました。

まだ年齢的にも小さな乳児部の子ども達でもこのように相手の姿から何かを感じとり、思いやりを示す光景をよく目にします。0歳児の保育室でも泣いている子に近寄り頭を撫でたり、玩具を渡そうとしたり、子ども達は本当に“優しい心’’を生まれ持っているのかもしれませんね。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2023年10月号より抜粋)

子どもの発想力を育むもの

お休み明けのお子様達から「プールいったよ!」「おじいちゃんおばあちゃんの所にいったの!」「水族館でねマンボウみたよ!こ~んな大きいの!」「私は〇〇ランドに5人でいったよ!」など、一人のお子様がお話を始めると次々と目をキラキラさせて報告が始まります。やはりご家族と過ごす時間はお子様達にとってかけがえのない楽しい時間であると共に、豊かな経験が出来る貴重な時間にもなることを改めて感じています。

2歳児4~5人

「なすとピーマンがとれました!」この夏何回目でしょうか?収穫したその日に塩もみにしたり、炒めたりと様々な方法で口にしてきたうさぎ組さん。「今度はどうやって食べようか?どうやって食べる?」と声にすると、「こうやって!」と手を口元にもっていき食べる動作を教えてくれるY君、「確かにそうだよね!」と微笑ましくお話していくと、次は「こうやって!」と包丁で切る動作を教えてくれたN君、「そうね切ってね!切ったらどうする?」「・・・・・」その他2~3人の子ども達が思い思いに頭の中では描いていそうですが言葉にはなりません。2歳児らしいやりとりと一生懸命に考える姿に成長を感じました。

5歳児Hちゃん

3歳児R君の治療の付き添いを頼まれ事務所に来ました。治療を終えて椅子から降りようとするR君に「手はここだよ!」「ここもってごらん」と自分で降りられるように教えてあげています。しっかりと足が床に着くまで見届け「でった~!」と喜ぶR君に「できたね」と共感、その後保育室に走って戻るR君の後ろからスピードを合わせて見守りながら戻ってくれました。まるで保育者のようです!

子ども達は日々の経験、人との関わりの中から自らの発想に繋がっていきます。豊かな経験、思いやりのある日常的なかかわりの大切さを改めて実感したお子様達の姿でした。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2023年9月号より抜粋)

「叱られるのかと思ったのかな?」

4歳児 Y君

「タンスにぶつけちゃったの ・ ・ ・」ひっかき傷のような跡と血も少しにじんでいたので、保育室内の確認をしようと「そっか、どこでぶつけたのか教えてくれる?危ないものね」と手を繋いで2階に行こうとしました。急に立ち止まり「かいちゃったんだ~」と照れながら教えてくれました。「な~んだ、そっか安心したよ。お部屋の棚が危ないのかと思って心配したよ」「かいちゃって血が出たから叱られるのかと思ったのかな?」「うん 」「痒い時 とぶつけた時 とはお薬も違うから、本当のことをお話してくれてよかった!」と伝えると治療後にニコニコ笑顔で保育室に戻っていきました。

Y君は小さな時から虫刺され後が腫れやすかったり、ひどくなると伝染性膿痴疹(とびひ)の心配もしていたので、今までの経験から〝きっとʻʻ掻いてしまうと叱られる〞と思ってしまったのかもしれません。その気持ちを受け止めつつ、正しく伝えることの大切さを感じて欲しいと思い関わりました。

4·5歳児にもなるとこのような会話は日常茶飯事です。大人からみると〝ʻʻ嘘をついている〞と感じてしまいがちですが、子どもには子どもなりに善悪の判断も考えるようになり、今までの経験から自己を守るかのように話しているのかもしれません。言葉の使い方も未熟な年齢なので、会話をしながら真意を読み取り、今後のコミュニケーションに繋がる関わりを大切に重ねていきたいと思います。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2023年7月号より抜粋)

子どもの心に共感しつつ伝える

お子様達はどのクラスもようやく今年度の生活環境に慣れ、のびのびと遊んだり探索や発見に目をキラキラとさせて楽しむ姿が多くなりました。先日の懇談会では、ご家庭での育児を伺う機会にふれ、改めて保育園とご家庭が日常の些細なことでも共有し合う事の大切さを感じました。

2歳児M君連絡帳の内容より

家族でよく川に行き、川の中に石を投げて遊んでいるとのこと。ある日買い物に出かけた時のエピソードを知らせてくれました。同じような石を見つけ投げてしまったM君。当然、お父さんに叱られてしまい、泣きながらお母さんの所に駆け寄ったそうです。お母さんに川でいつも投げて遊んでいることに共感してもらいつつも、お店の中は危ないから投げてはいけないことを諭されお父さんに謝りにいったそうです。
子どもの心にはしっかりと共感し、公共の場でのマナーを育てられている姿に感動しました。

5歳児Mちゃん

つい最近まで治療の度に大泣き、患部を手で覆い見せてくれず、大したことが無さそうな時には流水でサッと洗うだけにしたり、なんとかミツロウだけ塗らせてくれて終えることが多かったMちゃん。5歳児になり「私は痛いのが苦手なの!」「だからやらない!」目に涙をためながらもしっかりと言葉で伝えます。
トゲが刺さっていたので「そっか、痛いのは嫌だよね。みんな苦手だと思うよ。」と共感しながら一緒に考えていけるように話してみました。刺さったままの痛さや一瞬の我慢、しばらく絆創膏で覆い皮を柔らかくしてから抜くと痛みが和らぐことなどなど。Mちゃんの答えは絆創膏でした。翌日には「お家でとれたよ」と笑顔で報告に来てくれました。

人はみなそれぞれ感性があり、その感性は他人が全く同じに感じることは不可能です。たとえ小さな子ども達でも、その子なりの感じ方や経験値から予測する感性はそれぞれです。いつでもどんなふうに感じているのかな?と考えてみることは心を知る上でとても大切なことですね。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2023年6月号より抜粋)

”子どもの心”について

保育園で生活をするお子様達は、自分の思いを上手に言葉を使い伝えることがまだまだ難しい年齢です。0歳児の赤ちゃんだけでなく、言葉を使うようになった幼児部のお子様でも、言葉を選んで自分の気持ちを伝えたり、状況を相手に説明するなど、言葉を使ってコミュニケーションを取りながら生活することは難しいものです。子どもの気持ちがよく分 からずに大人が戸惑い悩んでしまったり、また、子ども同士がうまく思いを伝えられずに、お友達と喧嘩になってしまうのも当然ですよね。

子どもの思いを理解し受け止め共感したり、時には気持ちに寄り添いながら言い聞かせる等、子どもの心を感じながら子どもの身になって考えていく生活は、子育てのコツとも言えます。そして、たくさん共感してもらえた心の基盤が、今後の心の成長の糧となっていくようです。

1歳児 S君

新入園児のお子様が朝泣きながら担任の所へ手を伸ばしていました。担任は「えらいね!ママバイバイだね!また来るもんね!遊ぼー !」 と励 ま している姿 を じーっと見ていたS君、「あい!」と自分が手に持っていた車の玩具を手渡そうと差し出します。「S君ありがとう!」「どうぞだって良かったね!」と担任、それでも泣き止まないので今度は可愛い小さな手で〝いい子 いい子 ″ をす るように頭を撫で始めました。こんなに小さくてもしっかり共感!とても微笑ましい姿にみんなで癒された一コマでした。

お子様達の仕草や目線・表情・会話・行動などから感じる”子どもの心”をお伝えしたり、ご家庭で感じられた姿もお知らせ頂きながら、皆様と一 緒に”子どもの心”の理解を深めていきたいと思います。

副園長 若山 望
(「櫻」おひさま 2023年5月号より抜粋)

次年度の学年の姿を感じる成長

今年度も残り1か月となりました。最近のお子様達からは、次年度の学年の姿を感じる成長を多く見かけます。

<4歳児 Mちゃん>

事務所にお友達と2人で紙をもらいに来ました。 「A4のかみを10まいください!」私が 「じゃあ数えててね」と言って1枚ずつ順番に手渡していきました。お友達は私の手から離れる時に数えています。
「1・2・3・4 ・・・」するとMちゃん「ちがう 1・2、1・2 でしょ!」と自分の手に渡された時にカウントします。もうすぐ5歳児になる2人がどのように折り合いをつけるのか、私はあえてそのまま何も触れずに渡し続けました。Mちゃんの言葉を気にせず、私の手から数えるお友達の唱え方に合わせ始めたMちゃん、「・・・9・10! これでおわりだよ。5まいずつだ!」「おしまい?大丈夫?」と尋ねる私に、「うん!」と2人で声を合わせて意気揚々と保育室に戻っていきました。

<5歳児T君>

花粉症があり事務所に目薬をつけてもらいに来ていました。つけ終えた後になかなか保育室に戻りたがらないT君。看護師に聞くとお友達に泣いていると思われるのが嫌だということでした。そこで私はT君の気持ちに共感した後 「じゃあさ、“だって花粉症だからしょうがないんだもん!” ってみんなに言ってみたら?」と提案しました。すると「そっか!」と急に立ち上がり「だってかふんしょうだからしょうがないんだ・・・」と何回も呟きながら階段を上がっていきました。

どちらの例も心の発達がしつかりと読み取れる事例です。

“人はみな感情があり、その場の状況に合わせて自分の気持ちと折り合いをつけていく”
子ども達の心の成長は、私達大人に改めて人の中で生きる力の学び直しをさせてくれています。

副園長 若山 望
(「櫻」つくしんぼ・そよかぜ 2023年3月号より抜粋)

発語前でも…

今月は保護者の方から頂いた“子どもの心’’をご紹介させて頂きます。

1歳4か月Eちゃん

おねえちゃんが怒られて泣いてしまった時に、近くにいたEは側にかけより、まるで「どうしたの?だいじょうぶ?」と言っているように、なでなでしてあげてギューしてあげていました。 なんて優しい子なんだ…と泣きそうになったのと、1歳でこんな気遣いができるんだ!と感動し ました。

1歳3か月H君

会場から出て行こうとするH···。みていると出口でピタッと止まり、それ以上行かない感じ・・・「いっていいのかな?どーしょーかな?」と考えているような後ろ姿で見ていて感心しました。

どちらのお子様も姿が想像できますね。言葉で発することはまだまだ難しい年齢です。でも、こうして近くにいるご家族が心を読み取り、受け止め、理解してもらえる経験の積み重ねが、発語やコミュニケーション、そして、何より豊かな心の育ちに繋がります。

このようなご家族の温かな見守りが嬉しいです!

副園長 若山 望
(「櫻」つくしんぼ・そよかぜ 2023年2月号より抜粋)

あけましておめでとうございます

“日本の社会が人々に温かく、一人ひとりが安心して心穏やかに過ごせる暮らしを願う”
今年も祈願してきました。

“子ども達がのびのびと安心して過ごし健やかに成長できる場所でなければならない保育園、そしてそこにいる大人(保育士のみならず)は、“子ども達が安心して自己発揮し、明るく楽しく過せるように環境を整えながら、全ての子ども達を可愛がり愛情あふれる関わりを重ねられる人でなければならない’’、改めて子ども達の育ちを保障する大人の責任についても、深く心に刻む年明けでした。

「あけましておめでとうございます!ことしもよろしくおねがいいたします!」
背筋を伸ばし、相手の目を見てはっきりとした口調で堂々とご挨拶、お辞儀もきちんと行う5歳児。お正月、ご家族にたくさん褒めてもらえたことがうかがえます。年末年始休み明け、久しぶりの登園日に「泣いてしまうので は?」と、乳児部の保育士達は子ども達一人ひとりが好んで楽しんでいた遊びを用意して待っていました。一目散に遊び始めるT君、家族との離れ際は涙したものの、自ら気持ちを切り替え遊び始めるMちゃん。保育園の生活は、子ども達の意欲とそこに関わる大人達との信頼・共感、そしてご家族の方との信頼・協力が基本となっています。年の始めに見せてくれたこの子ども達のように、“子どもの輝かしい心の瞳”が中心である生活となるよう、保育園が温かな場所でなければいけないという基本を大切に重ねていきたいと思っています。”子どもの心”を保護者の皆様・担任達とたくさん語り合い、一人ひとりのお子様の成長を楽しみに、今年もまた保育に励んでいきたいと思います。

よろしくお願い申し上げます。

副園長 若山 望
(「櫻」つくしんぼ・そよかぜ 2023年1月号より抜粋)


子どもの力を信じる

比較的暖かな日が多かった11月、園庭で興味のある遊びでのびのびと楽しむお子様達の姿を多く目にすることが出来ました。

2歳児Aちゃん&1歳児Mちゃん

巧技台20cmと10cmの間にビームを2本渡し、傾斜のある橋が設定されてありました。
高い方から降りてくるAちゃん、下から上がってくるMちゃんを発見、二人とも両方のビームにまたいだ状態で立っていました。“どうするのかな~?’’と眺めていると、片方のビームに足をそろえ横向きで降り始めるAちゃん、その姿をみたMちゃんは空いた方のビームに同じく足をそろえて横向きに登っていきました。その間二人に会話はなく、落ちないように二人とも真剣でした。

三輪車遊び(5歳児2名・4歳児1名・2歳児3名)

朝の園庭遊びの設定に三輪車のコースが描かれていました。大きな三輪車を巧みに乗りこなす5歳児、そのカッコよさに憧れるようにして必死についていく4歳児、その姿をじっと見つめる2歳児、そんな中でも黙々と自分の三輪車を必死にこぎ続ける2歳児、5歳児の運転にはスピードがあったので私もしばらく目を離さず見守りました。ゆっくりとこぐ2歳児の後ろにつきどうするのかと見守ると、きちんと一度は止まりペダルから足を降ろし足で歩いて横から抜いていきます。次にはその子にぶつからないようカーブして抜くことを考えたようです。そのうち2歳児の担任が危険を感じたのか「ガソリンスタンドです」と砂場道具を用いて給油所を始めると2歳児数名が給油係りに、5歳児が「ガソリンお願いします!」と参加します。4歳児も嬉しそうに真似ます。みんなが笑顔でなんとも微笑ましい光景でした。

大人からみてヒヤッとすることでも工夫する力を持つお子様達、ちょっとした工夫で遊びに変えていくお子様達、“子どもの力を信じる”高橋理事長がよく話されている言葉を実感しますね。

副園長 若山 望
(「櫻」つくしんぼ・そよかぜ 2022年12月号より抜粋)

分かってはいるけど…

10月は気温の変動も大きく、 体調管理や衣服調節に戸惑う日が多くありましたね。当圏の子ども達は幼児部になると朝から運動着に着替え半そで半ズボン、少し冷える日は上に一枚長袖を着て 過ごしますが、 遊び始めるとすぐに脱いで元気いっばいに遊び回っています。先日の保育公開ではそんな退しい姿を感じられた方も多かったのではないでしょうか?

さて、 その保育公開、 お家の方に来てもらいとても嬉しそうな表情、 自慢気に活動する姿をたくさん見かけ ました。 そんな中、 これからお仕事に向かう…、 まもなく終了時間…、 お子様達の淋しい気持ちとの葛藤に何人か出会いました。

1歳児 H君

たまたま園庭で出会ってしまい、なかなか離れることが出来なかったH君。こちらの配慮ミスもありH君 に申し訳ない気持ちを伝えつつ「10数えたらママ抱っこおしまいでいい?」もちろん頷いてはくれません。
「そうだよねーごめんね」と受け止めつつも、せっかくの保育公開いつもの姿を少しでも見て頂きたかったので、数え始めました。もちろん納得はせず泣き泣きの別れになってしまいましたが、最後は私に手を伸ばしてくれて諦めてくれました。しばらくは担任に抱っこされていましたが、いつもはよく遊んでいるH君なのでそのうち本領発揮、ニコニコ笑顔で遊んでいました。

2歳児 Y君

H君との関わりがあった後、今度はこれからお仕事に行くママと離れることを悲しむY君を見かけました。 ママの足にしがみつきニタニタとしています。きっと承知はしていたのでしょう、同じように心の準備として10数え始めました。数え終えると自らママの足に絡めた手を放すY君、離れた後多少は声を出していま したが、しっかりと自分で気持ちを切り替えて担任と一緒に保育室に戻りました。

お子様達は、 分かってはいるけど気持ちの整理がつかずに泣いたり怒ったり…、よくありますよね。

大人も泣かれてしまうと戸惑います。 そんな時には、大人も素直に気持ちを伝えたり、切り替えのきっかけを作ってみてあげるのもよいでしょう。

副園長 若山 望
(「櫻」つくしんぼ・そよかぜ 2022年11月号より抜粋)