手伝いは一番身近な体験の場。食事の後片付け、部屋の掃除、洗濯物干し、片付けなどの手伝いを続けるうちに、生活の知恵を会得することにつながります。
「○○の部屋のだんぼーるをつけてください」これからの時期、子どもたちがお手伝いで事務所にやってくる季節です。2階のお部屋の先生に、「お手伝いしてくれる?」「うん、いいよ」「事務所に行って○○の部屋の暖房をつけてくださいって言ってきてくれる?」というやり取りの後に事務所にやってきた子どもたちの姿です。“お手伝いをするんだ!”と意気揚々と廊下、階段を通って来るうちに、“だんぼう・だんぼう…”と考えながらくるのでしょう。途中で“だんぼう”???“だんぼーる”と知っている言葉に入れ替わってしまった微笑ましい場面です。
そんな時も、間違った言葉を否定するのでは無く、「はい、わかりました、“だんぼう”ね、だんぼうつけるのね」と正しい言葉を改めて大人が伝えると、「うん、だんぼうつけるの」と言い直します。「おてつだいしてくれてありがとう」とお礼をいうと、嬉しそうに2階に戻っていきます。
ときに暖房という言葉が難しいお子様には、「○○の部屋を暖かくして下さい」とわかりやすい言葉でお手伝いを頼まれてくる事もあります。
1,2歳クラスのでも「ティッシュを下さい」「ポケットティッシュを3個ください」とお手伝いができます。そんな経験から物の名称を覚えたり、「1個、2個3個」と数えて渡すことで数量に触れ覚える機会にもなります。
お子様の年齢によってお手伝いできる内容も様々ですが、ご家庭での日常場面では、「カレーに入れるジャガイモを3個下さい」「赤いカバンを持ってきて」「長ネギの長い方を持ってきて」など数量や色、形などをお子様が考えて行動するようなことをお願いするなど少しの工夫が思考力や知的好奇心を刺激することになります。
1,2歳のお子様でも「ゴミを捨ててきて…」や「ママの○○持って来て」など、日常生活の中で大人が使っている物の名称や行動を示す言葉は、耳から聞いていて、話せなくても理解していることも多いのです。そして“助かったよ、手伝ってくれてありがとう”と声を掛けてあげましょう。
お手伝いを毎日必ずやらなければならない課題とするのではなく、「手伝ってくれてありがとう」「助かったよ」「うれしいな」などの言葉をたくさんかける機会をつくることで、役に立つことの喜びを感じ、いずれ自己肯定感や家族の一員としての自分の存在を確認することにつながるのでしょう。
私事ですが、幼かった時、毎朝、新聞を郵便受けからとってきて、父親が座る座卓に置くのが日課でした。小学生になってからは、玄関の掃き掃除、父親の革靴にブラシを掛けるのが私の朝の仕事でした。ピカピカに光らせることが嬉しくて、靴墨を塗って磨いたこともありました。厳格な父親から「ありがとう」と言われてとても嬉しかったことを覚えています。
自分がしたことを褒めてもらうこと、よろこんでもらえること、お子様にとっても大きなよろこびと自信につながります。生活の中で工夫してみてはいかがでしょうか。
「櫻」園長 若山 剛
(「櫻」おひさま 2025年11月号より抜粋)
