“そうだね、アリさん、いたい痛いだって”

園庭での事です。アリを見つけて “ありさんいた、ありさんいた” と喜んで眺めている2歳の子に呼ばれて、“いたね~” と一緒にしゃがんで眺めていると、走ってきた別の2歳の子が端からアリを踏み潰して回る場面がありました。

“あらあら可愛そう” と私が言うと “踏んだらダメ、痛いよ、可愛そう” と一緒にいた子が叫びました。

“そうだね、アリさん、いたい痛いだって” “やさしく見てあげてね” と言うと “うん” と言って受け入れてくれたようでした。

日常よく見かける場面ですね。

「可愛そうだからやめて!」「アリさんお化けで出てくるよ」と子に怒鳴っているお母さんの姿を見かけたこともあります。その場でつい言いたくなる気持ちもわかります。

ただ、小さいから、まだわからないから…ではなく、些細なことでも敢えて言葉にして伝える、思いを子と共感する機会をもつことも大切だと思ったのです。

その翌日も同じような場面があり遠目に見ていましたが、アリを見つけて喜んでいる子を横目に昨日と同じように踏み潰して走り回っている子の姿がありました。“あら、あら…” と思いましたが、今回は声を掛けませんでした。

難しいですね。アリにも命がある、踏んだら可愛そう…、でも子どもにとっては動くアリにねらいを定めて足をあげて踏むことも遊び…???。知らず知らずに踏んでしまうことはあっても、“わざと踏んだら可愛そうだね”と伝えて行きたいですね。

「櫻」園長 若山 剛
(「櫻」おひさま 2025年6月号より抜粋)